O.E.D.を引こう!
  当コラムは、『読んで得する翻訳情報マガジン』に掲載された記事原稿に加筆補正したものです。
   
mnemonics
 
「泣くよ(794)坊さん平安京」や「いい国(1192)作ろう鎌倉幕府」といった語呂合わせの暗記法があります。受験勉強でお馴染みのやつですね。「信長のイチゴパンツ(1582)が燃えちゃった(本能寺の変)」ともなるとほとんど意味不明の漫才ネタですが、記憶に留まるだけのインパクトはあるようです。

英語にも同じような「記憶術」があって、mnemonics(ニーモニック)と呼ばれています。まずは、OEDの定義から見てみましょう。

mnemonics, n. pl.
The art of refreshing, improving, or developing the memory, esp. by artificial aids; a system of precepts and rules intended to aid or improve the memory.

ギリシャ語を起源にもち、初出例が [1706 Phillips (ed. Kersey), Mnemonica.] となっており、かなり歴史のある言葉のようです。

ちなみにこんな派生語もあります。こちらの初出例は、1863年です。

mnemonist
One versed in the science of mnemonics; one who teaches how to train and improve the memory, or practises the art of memory. Also, a professional entertainer who practises recollection.

1863 Cooper in N. & Q. 3rd Ser. III. 383 His [sc. Fuller's] contemporaries gave him credit for being an accomplished mnemonist.

さて、mnemonics で有名なのは、米国の五大湖(ヒューロン湖、オンタリオ湖、ミシガン湖、エリー湖、スペリオル湖)の覚え方。Huron, Ontario, Michigan, Erie, Superior の頭文字を取って「HOMES」と覚えるそうです。いわゆる acronym(頭字語)ですね。

ちなみに『CD-ビジネス技術実用英語大辞典 第4版』で「acronym」を引いてみると、こんな例文が載っていました。

◆The term nylon is an acronym for "Now you look out, Nippon!"
 ナイロンは, 「さあ日本よ, 今度はお前が気をつける番だぞ」の頭字語である.

面白いことに mnemonics という単語自体、スペルを正しく綴るのはネイティブでも大変なようで、「mnemonics」の mnemonics があります。

 My New Earrings Match Olivia's Nice Imitation Clothes.(私の新しいイヤリングは、
 オリビアの素敵な模造の衣服にぴったり似合っている)

この暗記文を構成する各単語の頭字を並べると「mnemonics」という単語が出来上がるというわけです。

他にも例えば「NEWS」は North, East, West, South の頭字語、なんていう俗説もあります。いわゆる「四方山話」に通じる発想でしょうか。但し、こちらは語源的には、14世紀初頭の中英語 neues (neue (新しい) の複数形。形容詞の名詞化。-s は古フランス語 noveles (情報、ニュース)にならったもの) から来ているようです。余談ですが、日本語では「東西南北」ですが、英語では「北南東西(North, South, East and West)」となるんですね。そして、中国語では「東南西北(トンナンシャーペイ)」・・・このあたりの方位の順番の違いも面白そうです。

また、太陽系の惑星を太陽から近い順に覚えるのに「すいきんちかもくどってんかいめい」という有名な暗記文がありますよね。アメリカではこうなります。

 My Very Educated Mother Just Served Us Nine Pizzas.(大変、教養のある私の
 母が、私たちに9枚のピザを出してくれたところだ)

Mercury, Venus, Earth, Mars, Jupiter, Saturn, Uranus, Neptune, Pluto の各頭文字を順番に配した暗記文になっています。

ところで、英語では、数字を暗記する場合、日本語の「いい国(1192)作ろう・・・」ような語呂合わせができないので、各単語の文字数を用いるそうです。たとえば、年号の暗記に使われます。

 I sighted Thomas's rights.

上の文の各単語数(アポストロフィを除く)を順番に並べると「1776」となります。つまり、アメリカの独立宣言は1776年、というわけです。

 I captured south's flags.

同様にこれは「1865」となり、アメリカ南北戦争の終結年を覚えるためのものです。

さあ、来年は日本も歴史的な転換期を迎えるのでしょうか。後世の受験生はどんな風にこの年を記憶するのでしょう。フセイン元大統領の拘束を受けて、イラク問題が平和的に収束すればよいのですが・・・。

   小泉さん、自衛隊派遣におおよ(2004)わり!
 
初出 2003.12.24(竹)
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