O.E.D.を引こう!
  当コラムは、『読んで得する翻訳情報マガジン』に掲載された記事原稿に加筆補正したものです。
   
Webster versus OED -- トリビアの泉
 
作家アナトール・フランス(1844-1924)は、辞書を「アルファベット順に置かれた宇宙」と表現したそうですが、大辞典クラスともなると、トリビアの泉(宝庫)でもあります。今回は英語圏の二大辞書を使ったトリビア対決です。

英国のOEDが西の横綱ならば、東の横綱は何と言ってもアメリカの「ウェブスター大辞典」でしょう。前者が歴史的記述主義を標榜するのに対して、後者は人名・地名などの固有名詞を数多く収録したり、図版を掲載したりと「事典」的な色彩が濃くなっています。

電子辞書SHOPでも、Merriam-Webster社「Webster's 3rd New International Unabridged Dictionary, Ver.3.0」 CD-ROM 版を扱っています。Webster を冠する辞典は多種多様な版が出回っており、一つの伝統を形成していますが、いわゆる「ウェブスター大辞典」と言えばこれでしょう。

http://www.tranradar.net/webster.html

ここでひとつ面白いトリビアをご紹介しましょう。Webster で「fugu」 (河豚)を引いてみてください。

fugu
 : any of various globefishes that contain a heat-stable toxic principle resembling
  curare and are sometimes eaten in Japan with suicidal intent

「eaten in Japan with suicidal intent」とは何ともお馬鹿な定義ですね。採録時に「服毒自殺」を「フグ毒自殺」と読み違えたんでしょうか。

英語としては比較的新しい言葉らしく、OED で引いてみたところ「fugu」という見出し語はありませんでした。一方、SOD (Shorter Oxford English Dictionary) には、次のようにありました。

fugu
 A puffer fish of the family Tetraodontidae, esp. as a Japanese delicacy.

上述の誤りはご愛敬。Webster は決してビアスの『悪魔の辞典』みたくシャレや皮肉の効いたトンデモ辞典ではありませんので、お間違えなく。それどころか、アメリカ英語辞典の最高権威として位置付けられており、特にアメリカ文学研究には欠かすことのできない定番辞典です。CD-ROM版は15,000円と安価ですが、一切手抜きなし・・・侮れません。語義や語源、引用著者など13の検索optionによる絞り込み検索やAND, OR, NOT等のブール演算子を用いた複合検索、そして本文中の各単語のハイパーリンクによる相互参照などなど、OED に勝るとも劣らぬ検索性(操作性)を備えています。

閑話休題。今度はOEDのトリビアの番です(こちらも閑話ですが…)。ギネスブックにも載っているという世界最長の英単語があります。答えは「Smiles」・・・S から s までが mile(マイル)もあるから、なんてジョークじゃありません。確か40文字を超える長さだったけど、スペルはまったく覚えていません。こんな曖昧な検索でも OED CD-ROM版ならば、応えてくれます。

つまり、全文検索で「longest」と「word」が連続する部分を抽出してみるわけです。きっと何かしらの手掛かりが引っかかるはず・・・。

1)[ADVANCED SEARCH]をクリック

2)[SEARCH FOR ENTRIES]をクリック

3)以下のように入力して[START SEARCH]をクリック

  「longest」IN [full text]
  [NEAR]
  「word」IN [full text]

 Options for NEAR/NOT NEAR:
  [1 word]
  ・before

 Order of operations:
  [A than B]

ここでのポイントは近接演算子[NEAR]を使うことです。2つの検索語間の相対的な位置関係や距離を指定して検索するため、ノイズをグッと減らすことができます。検索結果は、次の通り。3件ヒットします。

 1 honorificabilitudinity
 2 non-word
 3 pneumono-

このうちの3番目、「pneumono-」をクリックして本文を呼び出します。すると、引用文の中にあった、あった、見覚えのある単語がありました!

1973 R. Megarry Second Miscellany-at-Law 160 It has been said that 'Floccinaucinihilipilification' is the longest word in the English language... The word's proud title must yield to some technical terms, such as pneumonoultramicroscopicsilicovolcanokoniosis.

「floccinaucinihilipilification」とは、ジーニアス英和大辞典によると「(おどけて)無価値とすること(癖)」という意味だそうです。29文字で一番長い単語と思われてきたのが、実はもっと長い専門用語(病理)があったとのこと。

それが「pneumonoultramicroscopicsilicovolcanokoniosis」で、何と45文字もあります。意味は「塵肺症」だそうです。微小のホコリを吸い込んだ結果、患う肺の病気で、その昔、英国の炭鉱で働く人が罹った病気とも言われています。

1973年、R. Megarry の「Second Miscellany-at-Law」という文献に初めて著されたことがわかりますね。しかし、どちらの単語もちゃんと収録しているジーニアス英和大辞典も大したものです。

Webster versus OED -- 知る人ぞ知るトリビアの泉、いかがでしたか?

●ウェブスター大辞典のフグの項には・・・
          「日本では自殺の目的で食べる」と書いてある

●OED に記載された、世界一長い英単語は・・・
           45文字もある「塵肺症」

“82へえ”位、いただけますでしょうか!?

【主な参考サイト:A Collection of Word Oddities and Trivia】  http://members.aol.com/gulfhigh2/words.html
 
初出 2003.10.24(竹)
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