![]() 当コラムは、『読んで得する翻訳情報マガジン』に掲載された記事原稿に加筆補正したものです。 |
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| ■ terrorism | |
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20世紀の東西イデオロギー対立が終焉を迎え、21世紀は宗教と民族の時代と言われます。2003年3月のイラク戦争の勃発は象徴的・衝撃的でした。ちょうどその頃、個人的な事情から時間を持て余しており、リアル・タイムでTVに囓りついて見てました。これは世界を震撼させた9.11ニューヨークテロ事件の延長であり、「対テロリズム」の戦争です。アメリカの〈グローバリズム〉対〈ローカリズム〉の、必然的な衝突という印象を持ちました。
terrorism(テロリズム)という言葉が terror(恐怖)に由来するのは何となく類推できますが、その定義は何でしょう。ある言葉の語源、初出の意味・用例を知るには、OED(Oxford English Dictionary)がベストです。さすがに最新の言葉は未収録(オンライン版を除く)ですが、「テロ」という言葉には歴史がありそうです。 terrorism [a. F. terrorisme (1798 in Dict. Acad., Suppl.), f. L. terror dread, terror: see -ism.] A system of terror. 1. Government by intimidation as directed and carried out by the party in power in France during the Revolution of 1789-94; the system of the 'Terror'(1793-4): see terror n. 4. terror 4. reign of terror, a state of things in which the general community live in dread of death or outrage; esp. (with capital initials) French Hist. the period of the First Revolution from about March 1793 to July 1794, called also the Terror, the Red Terror, when the ruling faction remorselessly shed the blood of persons of both sexes and of all ages and conditions whom they regarded as obnoxious. Hence, without article or pl., the use of organized intimidation, terrorism. 「テロリズム」という言葉は、フランス革命期の恐怖政治(1793〜94年)から来ていることがわかります。この間、ロベス・ピエール率いるジャコバン党が、革命の敵とみなした約1万2000人を、些細な理由で粛正(処刑)しました。いわゆる「赤色テロ」と呼ばれるものですね。 試みに『海野さんの辞書』でお馴染みの「ビジネス技術 実用英語大辞典(第4版)」でも「terrorist」の項を引いてみたところ、以下のような用例が収められていました。本書は、欧米の生の最新文献から文例・用例が採録されている点に特徴があります。早々に同時多発テロ事件を押さえている辺り「実用」的であることが窺えます。 ◆since the (tragic [devastating, deadly, horrible, terrible]) terrorist(s) attacks against the US on September 11 《意訳》9月11日の米国同時多発テロ以来(*2001年の) devastate とは見慣れない言葉ですが、「荒廃させる」「挫折させる」という意味だそうです。OEDの記述は次の通り。ラテン語から来ており、19世紀になってから一般化したようですね。 devastate [f. L. devastat- ppl. stem of devastare (see devast). Used by Sir T. Herbert and in Bailey 1727, but not recognized by Johnson 1755, and app. not in common use till the 19th c.] trans. To lay waste, ravage, waste, render desolate. 現代のテロリズムは、国家の体裁を持たない組織から既存の権力に向かって仕掛けられる政治的暴力となります。戦争やゲリラとは異なり、敵を殲滅することよりも心理的効果もしくは政治的アピールを狙ったものであり、往々にしてテロのターゲットになるのは何の関係もない民間人。まさに terror(恐怖)の -ism です。 今回、アメリカは、「民主主義と文明を守る戦い」というスローガンを掲げてイラクという主権国家に対して先制攻撃を仕掛けたわけですが、一旦、戦争となると傷つくのは、軍部や政府の中枢ばかりでなく、ここでも一般市民です。もたらされる被害は(規模の違いこそあれ)実際、テロと大した違いがないのではないでしょうか。 テロ行為自体は決して容認できるものではありませんが、アラブの政教分離を促し、自国流の民主主義を叩き込もうとするアメリカのグローバリズムに「異文化の排除」という不穏な空気を感じてなりません。 OEDによると「イスラーム」という言葉は、「自己を委ねること」「神への絶対無条件的な帰依」を意味するそうです。 Islam [a. Arab. islam lit. 'resignation, surrendering', inf. noun of aslama 'he resigned or surrendered (himself)', spec. 'he became or was resigned or submissive (to God)', hence 'he became or was sincere in his religion', 4th conjug. of salama 'he was or became safe, secure, or free', whence also the words salaam, Muslim, Mussulman.] このように宗教色の強い地域にあってアメリカの流儀を通すことは容易ではなく、事態は複雑、深刻です。アメリカのグローバリズムに対する terrorism、その terrorism に対する counter-terrorism ・・・この負の連鎖を断ち切ることはできるのでしょうか。 「翻訳」とは、煎じ詰めれば、異文化交流の橋渡しです。異国の文化をきちんと理解し、自国の文化を理解した上で初めて成り立つものではないかと思っています。いま求められるものは、様々な文化に通じ、異国の「良き理解者」たる翻訳者的な視点なのかもしれません。 |
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| 初出 2003.4.24(竹) | |
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