O.E.D.を引こう!
  当コラムは、『読んで得する翻訳情報マガジン』に掲載された記事原稿に加筆補正したものです。
   
OEDの検索 その1 引用文検索
 
英語学史上、燦然と輝くOEDは、完璧な歴史主義に貫かれています。すなわち、言葉の用法を初出例から洗い出して、その変遷を時系列で記述しているのです。通常の学習辞典とは成り立ちが異なり、ややとっつきにくい印象がありますが、英語に興味のある方にとっては堪えられない情報源です。

かつては20万円以上し、高嶺の花だった大著も、CD-ROM版で6万円を切っています。しかも紙媒体では到底望めない検索の利便性を備えており、これを使わない手はありません。

OED on CD-ROM (2nd edition, version 3.0) は2枚組です。1枚目はインストールディスク、2枚目がデータディスクです。膨大なデータのため、フルインストールにはハードディスクに1.7GBの空きが必要です。一旦インストールすると CD-ROM は不要になりますが、3ヶ月に一度の割合で、正規ユーザー認証のためにデータディスクの挿入を要求されます。今回は、このOEDの検索にスポットを当ててみましょう。

OED on CD-ROM V3.0 には、大きく2つの引き方―単語検索「FINDWORD」とテキスト検索「SIMPLE SEARCH / ADVANCED SEARCH」があります。

単語検索は、見出し語を入力してその単語の説明を呼び出す一般的なものです。一方、テキスト検索では、検索語を入れると、OED の全文、つまり語源、語義、用例の全文(20巻分+補遺)からその語句が出ている箇所をくまなく拾い上げることができます。このテキスト検索は強力で、たとえば「a」や「the」などの冠詞までも検索の対象となります(尤も、検索結果の表示は10万件までに制限されますが・・・)。

テキスト検索「SIMPLE SEARCH」は、デフォルトでは「full text」検索になっていますが、以下の通り、リストボックスから検索フィールドを指定することができます。

0)full text     全文検索
1)earliest date   初出の年代から検索
2)definitions    語義から検索
3)etymologies    語源から検索
4)languages names  言語名から検索(語源フィールド内)
5)quotations     用例全体から検索
6)quotation date   用例の年代から検索
7)quotation author  用例の著者名から検索
8)quotation work   用例の作品名から検索
9)quotation text   用例文から検索


さらに「ADVANCED SEARCH」では、ブール演算子(AND、OR、NEAR、NOT)を使った複合検索ができます。ブール演算子とは、検索する複数の語句間の論理関係を指定するコードで、以下のものがあります。

・AND  両方の検索語を含むものを検索
・OR   いずれか一方の検索語または両方の検索語を含むものを検索
・NEAR  エントリー内の同一フィールド中に出現する両方の検索語を含むものを検索
・NOT  一方の検索語を含むが、他方の検索語は含まないものを検索

OEDは文学作品からの引用が多いため、ブール演算子を用いれば、 ある特定の作家や作品の引用文のみまとめて探し出すことができます。 シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』からの引用文で rose を 含むものを抜き出してみましょう。

1)まず「ADVANCED SEARCH」ボタンをクリックして検索語入力画面を呼び出します。

2)次に「QUOTATIONS」ボタンをクリックして選択(赤色状態)します。

3)以下のように検索語を入力、AND 条件を指定して「START SEARCH」ボタンをクリックします。

  [rose]IN[quotation text]
  [AND]
  [Rom.&Jul.]IN[quotation work]


【rose の検索画面例】
 http://www.nichigai.co.jp/translator/oed/search_oed1.html

検索結果として「rosemary」「sweet」「will」の3つのエントリーがヒットしました。その中の「sweet」をクリックすると、以下の引用文が現れます。

 1592 Shakes. Rom. & Jul. ii. ii. 44 (Qo. 1)
 Whats in a name? That which we call a Rose, By any other name
 would smell as sweet.

シェイクスピア戯曲の代表作の1つである『ロミオとジュリエット』第二幕第二場のバルコニーにおけるジュリエットのセリフです。

「おお、ロミオ、ロミオ!どうしてあなたはロミオなの?」に始まり、「名前ってなに?バラと呼んでいる花を別の名前にしてみても美しい香りはそのまま。」という有名な下りですね。

また、OEDでは同じフィールドにおいて3単語までの複合検索ができます。この時、単語間の距離と前後関係を指定することもできます。

やはりシェイクスピアの『ハムレット』からの引用文で to と be を含むものを抜き出してみましょう。先程と同じ様に検索語を入力し、今度はNEAR条件を指定して「START SEARCH」ボタンをクリックします。

  [to]IN[quotation text]
  [NEAR]
  [be]IN[quotation text]
  [AND]
  [Ham.]IN[quotation work]

検索結果として25件のエントリーがヒット。その中の「be」をクリックすると以下の有名な一文が現れます。「生きるべきか死ぬべきか・・・」というお馴染みのアレですね。

 1602 Shakes. Ham. iii. i. 55
 To be, or not to be, that is the Question.

本文の記述が長いと、検索語がどこにあるのか探すのが大変そうに思われますが、ご心配なく。ヒットした部分については、本文中に赤色で強調表示されるのですぐに見つけられます。この辺りの細やかな配慮の行き届いた仕様が、OEDの使い勝手をよくしています。数あるCD-ROM辞書の中でも大変完成度の高いものと言えるでしょう。

OEDでは、辞書の規模や歴史的経緯から、同じものを示すのに様々な表現や省略形が存在します。引用作品名も例外ではなく、ユニークな省略形を用いています。あらかじめそれらを把握していないと満足できる検索結果を得ることは困難でしょう。この辺りは、CD-ROM のオンラインヘルプに詳しいのですが、ひとまずシェイクスピア作品について、abbreviation をご紹介しておきます。検索の際のご参考に。

All's WellAll's Well that Ends Well
Ant.&Cl.Antony and Cleopatra
A.Y.L.As You Like It
Com.Err.Comedy of Errors
Cor.Coriolanus
Coriol.Coriolanus
Cymb.Cymbeline
Ham.Hamlet
Haml.Hamlet
1Hen.IV1 Henry IV
2Hen.IV2 Henry IV
Hen.VHenry V
1Hen.VI1 Henry VI
2Hen.VI2 Henry VI
3Hen.VI3 Henry VI
Hen.VIIIHenry VIII
JohnKing John
Jul.C.Julius Caesar
LearKing Lear
L.L.L.Love's Labour's Lost
Macb.Macbeth
Meas.for M.Measure for Measure
Merch.V.Merchant of Venice
Mids.N.A Midsummer Night's Dream
Mids.N.D.A Midsummer Night's Dream
Much AdoMuch Ado about Nothing
Oth.Othelo
Per.Pericles
Rich.IIRichard II
Rich.IIIRichard III
Rom.&Jul.Romeo and Juliet
Tam.Shr.Taming of the Shrew
Temp.Tempest
TimonTimon of Athens
Tit.A.Titus Andronicus
Tr.&Cr.Troilus and Cressida
Twel.N.Twelfth Night
Two Gent.Two Gentlemen of Verona
Wint.T.Winter's Tale
 
初出 2003.8.13(竹)
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