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 今年一年大変お世話になりました。
 
 さて、この号において、田村洋一さん、北田敬子さん、山本ゆうじさん
 の連載コラムが終了となります。
 毎回決してひけらかすわけではなく、さりとて覆うことのできない博
 識、慧眼が伺える文章を頂戴いたしました。誠にありがとうございま
 した。
 お三方の今後のますますのご活躍を心より祈る次第であります。

 と、感謝しつつ2009年最後のメールマガジンをお送りいたします。
                              (青)

 ━━━━━━━   コンテンツ・メニュー   ━━━━━━━━━
 ■ 仕事としての翻訳                  井口 耕二
 ■ 翻訳読書ノート48                  北田 敬子
 ■ Be prepared! ― 「翻訳」の未来                    田村 洋一
 ■「山本ゆうじの翻訳道具箱」(その62・最終回)       山本 ゆうじ
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 ■ 仕事としての翻訳                  井口 耕二

 ◆ビジネスの流れ

 登録がすめば、翻訳会社のコーディネーターから仕事の打診を受ける準
 備が完了です。プロの入口に立ったといえます。

 ●仕事の打診

 登録してから初めての打診が来るまで、どのくらいの時間がかかるもの
 でしょうか。

 登録してすぐに声がかかることもあれば、1年も音沙汰がなかったあと
 に突然話が舞い込むこともあります。何年たってもお声がかからないこ
 ともあります。登録してすぐ声がかかるというのは、よっぽど優秀だっ
 たか、その会社が必要としている分野が専門だったか、はたまた、ホン
 トにたまたまというラッキーな場合だったかです。今現在、売れっ子に
 なっている翻訳者でも、たいていは「トライアルに合格して登録はされ
 たけど、仕事の打診が来ないよぅ〜!」という、もんもんとした経験を
 しているものです。

 なぜ、すぐに打診が来ないのか。仕事を発注する側の立場にたってみれ
 ばわかります。

 あなたが登録される前も、翻訳会社の仕事は回っていました。すでに登
 録されている翻訳者だけですべての仕事が処理されていたわけです。そ
 こに1人、登録者が増えた。どうしましょうか。トライアルをしている
 とはいえ、実際の仕事でどのような訳文を上げてくれるのかは不明で不
 安があります。トライアルはいいのに仕事はボロボロ……そんな翻訳者
 もいますからね。あなたに頼みたいと思う理由がなければ、大事をとっ
 て「いつもの人」に発注したくなるのが当たり前です。

 リスクをとってでもあなたに頼みたいと思うのはどのようなケースでし
 ょうか。

「この分野の人が不足して困っていた」というケースなら、その分野の
 仕事がきたとき、新しい人に回してみるでしょう。優秀であるなど「こ
 の人は絶対、ウチに欲しい」と思う翻訳者だったら、いつもほかの人に
 頼んでいた仕事を回してでも新しい人をつかまえようとするでしょう。

 もちろん、「将来、翻訳者が不足したらお願いしようかな」のレベルで
 あっても、少しずつ仕事を頼んで様子をみておくべきです。発注量を少
 なくする、後処理の時間を長めにとるなどの対応がとれればリスクは小
 さくできます。逆に言えば、そういう案件がはいってこなければ、新し
 い人に発注できません。登録の直後にたまたまそういう案件が飛び込み、
 発注してもらえればラッキーということです。

 仕事の打診がこないなぁと思うなら、「営業」をかける手もあります。
 翻訳会社には、あなた以外にもつぎつぎと登録されていきます。時間が
 たてば忘れられるのです。ただし、しつこい営業はかえって嫌われます。
 兼ね合いが難しいところです。相手によっても違いますし。トライアル
 アンドエラーでやってみるしかありません。

 そういう意味では、季節のあいさつを兼ねての営業がいいかもしれませ
 ん。特に暑中見舞いはお勧め。お盆時期で「いつもの」翻訳者がお休み
 しており、コーディネーターが困っていることがありますからね。営業
 を兼ねるのですから、登録されている分野など、発注する側が欲しいと
 思う情報は「さりげなく」記載しておきましょう。

 近況報告を兼ねるのもいいと思います。「資格試験の上級に通った」
「最近、他社で別分野の仕事をしている」など、登録時と異なる状況が
 生まれたとき、ハガキやメールでお知らせするわけです。

 媒体は、ハガキとメール、それぞれに一長一短です。

 ハガキはちょっと面倒です。特に最近のようにメールが普及すると、紙
 媒体に書いてポストに入れるというのはなかなか大変だったりします。
 発注につながらなかったとき、反応も期待できません。でもハガキなら、
「こんなの来てるよ〜」と翻訳会社の中で回してもらえたり、ハガキを
 見ながらコーディネーター同士であなたのことを話してくれたりといっ
 た可能性があります。

 メールは手軽です。自分にとっても手軽ですし、相手も比較的気軽に返
 事が書けます。「こういう分野で登録されていますが、この分野の仕事
 は、今、どういう具合でしょうか」などと聞いてみれば返事が返ってく
 る可能性もあります。デメリットは、まず、送った相手にしか読んでも
 らえないことがあります。かといって同報メールで多くの人に送るのは
 スパムに近く、嫌われることがあります。だいたい、その翻訳会社のコ
 ーディネーター、全員のメールアドレスを知っているとは限りません。
 あなたが知らないコーディネーターのところに、あなたにぴったりの案
 件があるかもしれません。もう一つのデメリットは、たくさんのメール
 に埋もれて読み飛ばされること。メールは手軽な分、読まなくてもいい
 ものまでたくさん届くことがあり、読む必要のあるなしでぱぱっと分け
 てしまう人がいます。相手がそのような人であった場合、ごあいさつの
 メールは「読む必要なし」側で読み飛ばされることがあるのです。

 ☆本編及びバックナンバーはこちら↓
 http://tran.blog.shinobi.jp/Category/16/

【著者プロフィール】
  井口 耕二(いのくち・こうじ)a.k.a. Buckeye
  技術・実務翻訳者、翻訳フォーラム共同主宰、社団法人日本翻訳連盟
  常務理事
  高品質・高価格をめざして翻訳の現場で日々努力するとともに、オン
  ライン・オフラインの各種記事、セミナーなどさまざまな場で翻訳者
  という立場からの提言や主張を行っている。
  著書に『実務翻訳を仕事にする』(宝島社新書)、訳書に『スティー
  ブジョブズ−偶像復活』(東洋経済新報社)、『ウィキノミクス−マ
  スコラボレーションによる開発・生産の世紀へ』(日経BP社)などが
  ある。
  ホームページURL: http://buckeye.way-nifty.com/translator/
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 ■ 電子辞書SHOPからのお知らせ

 ★ 年末年始の営業のお知らせ
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 電子辞書SHOPは、年内の営業は29日(火)までです。新年は1月5日(火)よ
 り営業を開始いたします。
 尚、お休みの期間もオンラインでのご注文は受け付けておりますが、ス
 タッフによる受注確認・お問い合わせへの回答は1月5日(火)から、商品
 発送は7日(木)からになります。また、仕入れ商品はお待ちいただく場
 合もございます。どうぞよろしくお願いいたします。 

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 ☆ TranRadar バックナンバーブログは↓こちら
   http://tran.blog.shinobi.jp/
 
  ※連載毎に読み返せるので新たな発見があります。
 ※コラムに対するご感想・ご意見お待ちしております。
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 ■ 翻訳読書ノート48                  北田 敬子

「アーティストは藝術家」

 半世紀以上も倦まず弛まず情熱を捧げ続ける対象を得た人生は幸福であ
 ろう。丸谷才一はジェイムズ・ジョイスで大学の卒論を書いてキャリア
 をスタートさせ、自身が小説家・文芸評論家となって一家を為し、今ま
 たジョイスの新訳を上梓した。ジョイスの好きな「円環」を地でいく。
 落ち着いたコバルトブルーの表紙には日本語で、裏表紙には原語でその
 堂々たるタイトルが印字されている。『若い藝術家の肖像』(ジェイム
 ズ・ジョイス著 丸谷才一訳 集英社 2009)という、このずっしりと
 重い(820g!)単行本を取り上げる読者はいかなる人々であろうか。

 総ページ数の1.2%(65ページ)は丸谷自身の小説解題である。のみならず
 各ページの下段20%は脚注に充てられている。そうでもしないとこの重
 層構造を持つテキストを日本語で味わうことが出来ないと訳者は考える
 からであり、調べれば調べるほど掘り出されるヨーロッパ文化(とりわ
 けキリスト教と古典芸術にまつわる蘊蓄)の奥深さ・幅広さを日本語に
 表す方法はないと彼が確信するからであろう。もちろんジョイスの故郷
 であり終生作品の舞台となったアイルランド、ダブリンの地誌や歴史に
 ついても同様である。ページをめくりながら私は心の内で「これぞ筋金
 入りのマニア、正真正銘のオタクだ」と快哉を叫んでいた。

 しかし、この本を通勤電車で読むのは苦痛である。(重すぎる。)ゆっ
 たりと構え、図書室か自宅の机(食卓でもOK!)に広げるしかない。何
 にも邪魔されずに読書に耽溺できるなら、至福の時が過ごせるだろう。
 だが、この作品、初見の高校生が楽しめるか知らん? 幼年時代と少年
 時代を描くI章、いよいよ性的な懊悩の始まる思春期II章までは文体の
(比較的な)平明さに助けられてスラスラ行くはずだ。III章の地獄の説
 教あたりからリタイア組が出るかもしれない。(いや、ダンジョン巡り
 だと思えば受けるのかも。)そこを抜け、天命への問いかけ、拒絶、解
 放へ至るプロセスはスリリングだろうか。V章の美学論争、哲学・歴史・
 民族観などの「問答」はどうだろう。ただ面白いとは言えまい。けれど
 も丹念な読書のあげくに最終行にたどり着いたなら、達成と高揚感が得
 られること間違いなし。

 ”A Portrait of the Artist as a Young Man”は”Ulysses”と並んで
 ジョイスによる20世紀文学の精華とされている。こうして「新訳」で登
 場したかつての前衛的作品は未だ色褪せぬどころか益々面妖にテキスト
 の迷宮へと読者を誘う。「導師」の役を買って出る翻訳者、丸谷才一の
 いかにもしかつめらしい、そして実はきわめてユーモラスなスタンスが、
 この本格的文藝作品に新たな命を吹き込んだ。どうか、返品の上裁断さ
 れるなどという多くの良書の運命を辿ることがないように! この翻訳
 は我が日本語の財産なのだから。

 【著者プロフィール】
   北田 敬子(きただ・けいこ)
  東洋学園大学・現代経営学部教授
  東京女子大学英文科卒業後、東京都立大学修士課程英文学専攻修了。
  バージニア大学教育学部にて在外研究。
  専門は英語文学、言語とコミュニケーション
  ホームページURL http://www.kitada.com/keiko/

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 ■ Be prepared! ― 「翻訳」の未来           田村 洋一

 西暦2009年から2010年の変わり目で、英語の年号の呼び方が「two-
 thousand...」から「twenty ...」に変わります。もう耳慣れてはいて
 も変則的な呼び方だったので平常に戻るわけです。映画「2001: A Space 
 Odyssey」が公開された1968年、日本のSFファンの間で「2001」はどう
 読むのかという議論があったことを思い出します。西暦2100年は「two-
 thousand one-hundred」ではなく「twenty-one hundred」でしょうから、
 次にこの呼び方が復活するのは990年ほど先の西暦3000年からの10年間
 ということになります。英語が、さらには文明社会が存続しているとい
 う保証はありません。時代を遡ると、西暦1000年のブリテン島はノルマ
 ン征服以前で、英語はまだ形を成していません。そう考えると、私たち
 はかなり珍しい経験をしたことになります。

 もう少し短いタイムスパンで考えてみると、「翻訳」という仕事がい
 つまで存続するのか、という切実な問題があります。私は今後10年以内
 に月並みな翻訳(英日/日英などの産業翻訳を含む)は機械翻訳だけで十
 分になると予想します。これはパソコン翻訳ソフトの延長線上の話では
 ありません。圧倒的な処理能力とコーパスを活用できるWebサービスで
 実現すると見ています(現在のパソコンは複雑すぎて無駄が多く、遠か
 らず廃れていくでしょう)。社会全体として日本語に対する要求水準が
 低下していることも機械翻訳にとってはプラスに作用します。この潮流
 を加速する立場にいるのがGoogleです。同社は検索ページで翻訳機能を
 提供し、2009年秋からパソコン向けに日本語IME(β版)も提供していま
 すが、2010年内に製品化する「Chrome OS」でどんな翻訳機能を提供す
 るかは注目に値します。

 「Chrome OS」は「OS」とは言うものの、MS WindowsやMac OSのような
 スタンドアロンのOSではなく、インターネットと一体化した、シンクラ
 イアントの性格が濃いシステムです。ユーザーが使用する専用コンピュ
 ータ(むしろ「端末」)は、ディスプレイとキーボードの他は起動と表示
 に必要な最小限の機能しか備えず、「雲」の中にあるサーバーに接続し
 て初めてコンピュータとして機能します。原則的に、端末側にはソフト
 やデータは保存されません。サービスは世界規模なので、Googleが用意
 するアプリケーションは初めから多言語対応を想定したものになるはず
 です。この形態が成功するとコンピュータ業界(特にパソコンのハード
 &ソフト業界)が深刻な影響を受けることは確実です。

 ところで、「人工知能」が停滞(挫折ではない)した先例を挙げて、
「機械翻訳」も実用レベルに達するには時間がかかると高を括るのは誤
 りです。コンピュータの処理能力の飛躍的な向上と検索技術の進歩によ
 り、原文の文脈を的確に判断して翻訳精度を向上させることが可能にな
 っています。エレガントなアルゴリズムだけに頼るよりも「力まかせ」
 の戦略の方が実用的という場合があり、コンピュータはそれが得意です。
 Google以外で機械翻訳がほぼ全面的に採用されている実例は、Microsoft
 のサポートサイトにある知識ベースの日本語版です。実用に供されてい
 るにしては問題の多い日本語ですが、進歩は見られます(※参考リンク)。
 原文と比較してみると機械翻訳が苦手な部分がわかります。

 蛇足ですが、翻訳原文にミスや曖昧さがあるという例は少なくないの
 で、多言語で文書を作成する企業向けに、翻訳しやすい原文の作成を支
 援するソフトを開発するのも翻訳精度を上げる有効な方法と思われます。

 今後、翻訳者は厳しい境遇に置かれる可能性があり、単に外国語が得
 意というだけでは生き残れません。安易にカタカナ語に逃げてしまう翻
 訳者(クライアントにも責任の一端があります)や、推敲する能力がない
 のに翻訳ソフトに頼る翻訳者は、自らの墓穴を掘ることになります。そ
 れらの翻訳者は、機械翻訳がもう一歩進めば容易に凌駕されてしまうで
 しょう。翻訳者は従来にも増して専門分野を確立する必要がありますが、
 時間的・能力的に難しいかもしれません。逆に、それぞれの分野の専門
 家が翻訳ツールを駆使して高品質の翻訳を行うほうが理に適っています。
 ターゲット言語の優れた表現能力を持つレビューアは存在価値が残りま
 す。 ただし、翻訳の腕を磨く機会が徐々に減少するため、翻訳者から
 レビューアへのキャリアパスが維持できるかどうかは疑問です。

 それでは人間の翻訳者でなければできないことは何でしょうか。新し
 い訳語や表現を考案すること、企業の文書全体のカラーや品位を維持す
 ること、文章そのものではなく背景にある文化を訳出すること、などが
 含まれます。文章表現そのものを味わう文芸作品は機械翻訳には馴染ま
 ないと言われます。しかし、それも聖域ではないかもしれません。今日
 のようにWebに膨大な情報があふれているとき、ゆっくりと読書する時
 間はとりにくいものです。Amazon.comの「Kindle」に代表されるデジタ
 ル読書端末が普及すると、それを利用して「日本語で海外のベストセ
 ラーを斜め読みできれば便利」と考えるユーザーが増える可能性があり
 ます。「読んだふりをしたい」というニーズは結構あり、しかも正式
 の日本語訳が出る前に読めるとなれば、機械翻訳でダイジェスト版を作
 ることは現実的な課題になります。海外の新聞記事の日本語訳はさらに
 需要が多く、機械翻訳にも馴染みやすいものです。

 「翻訳者」は、かつての「プログラマ」(正確にはソフトウェア技術者)
 の轍を踏むことになるのでしょうか。30年ほど前のメインフレーム全盛
 時代、コンピュータ業界では「プログラマ不足」が叫ばれました。将来、
 数十万人が足りなくなるという主張でした。ところがオープン化とパソ
 コンへのシフトという状況の変化により、人手不足は現実には起こらず
(ただし、優秀な人材は常に不足)、現在はソフトウェアの自社開発その
 ものが減少し、基幹業務でも出来合いのソフトウェア・パッケージを導
 入する(必要ならカスタマイズを行う)のが普通になっています。日本の
 プログラマは質・量ともにピーク時より低下していると考えてよいでし
 ょう。膨大な開発作業をこなしてきた世代は、ほとんどが定年に達して
 舞台を降りました。主要なソフトウェア製品は相変わらず外国製(大半
 が米国製)で、日本には足腰のしっかりした(ゼロから開発できる能力の
 ある)プログラマが育つ素地がほとんどありません。概して、確たる設
 計思想もなく、すぐに見つかるバグを見過ごし、動けばよいというレベ
 ルで満足しているようにさえ見えます。ソフトウェア開発者の就労時間
 は不規則、著作権は尊重されず、職能団体もありません。どこか翻訳者
 の状況に似ているのではないでしょうか。

 ●参考リンク:
 ・Microsoftの知識ベース「KB972813」:
 http://support.microsoft.com/kb/972813
 ※「Windows 7」の多言語対応機能である言語パック(MUI:Multilingual
   User Interface)の説明。この機能の公開情報は不足しているので
   重要な資料だが、皮肉なことに機械翻訳の悪い見本になっている。
   日本からアクセスする場合、米国サイトにアクセスしても自動的に
   日本語ページにリダイレクトされる。 原文を確認したいときは二
   度手間になってしまう。

 ●追記:
  2004年4月から続けてきた私のコラムは今号が最終回となりました。
  翻訳に多少なりとも関係するテーマを選んで書いてきましたが、興味
  を持っていただけたでしょうか。読者の皆様に感謝するとともに、
  今後のご健闘を祈ります。

【著者プロフィール】
   田村 洋一(たむら・よういち)
   東京生まれ。幼稚園に入る前からFENを聴いて育った生粋のビートル
   ズ世代。SEとして日米のコンピュータ会社に勤務し業界の栄枯盛衰を
   目の当たりにしてきた。現在はフリーの翻訳者、レビューア、編集者。
   分野は半導体、通信技術、セキュリティなどのIT関係から出版、文化、
   音楽など幅広い。自分の眼を信じる美術愛好家でもある。

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 ■「山本ゆうじの翻訳道具箱」(その62・最終回)
                 英語力向上に大切なのは「やる気」と「気合い」だ!

 忘年会やパーティーの季節ですね。英語が話せる人たちのパーティーに
 時々参加しますが、英語ネイティブと日本人の間には、しばしば見えな
 い壁があります。またCNN、NPR、BBCなどの英語ニュースで、非英語ネ
 イティブ話者へのインタビューを聞いていて思うことがあります(ちな
 みに日本人はほとんど出ません)。発音に癖はあるものの、語彙力や表
 現力は、「英語ができる日本人」よりは数段上だなあ、ということです。

 英語を学ぶ上で一番大切なものは、なんでしょうか。それは「やる気」
 です。先日、英語教育の大先輩にご意見を伺ったところ、同じ答えが得
 られたので、確信が深まりました。最終回の今回は、「やる気」、そし
 て「気合い」について考えます。

 どのような学習・教育でも、主体になるのは常に、「教える」側ではな
 く、「学ぶ側」です。努力したい気持ちは、自分の内側からわき上がる
 ものでなければなりません。外から努力を強制されるのであれば、その
 外圧がなくなったとたんに進歩は止まります。

 私が日本の中学・高校で見たのは、生徒を押さえつけ、やる気をつぶす
 教育です。英語を含め、「学びの喜び」が教室ですっかりはぎ取られ、
 大学に入学するころにはぼろぼろになっている、ということです。学ぶ
 本人に原動力がなければ、学びは苦痛でしかありません。英語の楽しさ
 を伝えるのが、教師の使命のはずです。英語教員自身が英語の楽しさを
 知っていれば、日本人の英語力がここまで低迷することはなかったはず
 です。生徒のやる気、自ら学ぼうとする意欲を引き出せれば、教員の仕
 事は楽になるはずです。もっとも、英語教育を停滞させている根本的な
 原因は、大学入試の仕組みです。大学入試が根本から見直されない限り、
 日本人は英語が苦手なままでしょう。

 それはともかく、今英語を学んでいる人には、英語学習を生活に取り込
 み、「習慣化する」ことが大切です。私の場合は、英語の映画や海外ド
 ラマは必ず英語で聞くこと、毎日、食事や移動中にポッドキャストを聞
 くことが習慣になっています。習慣、ということは意識して努力しなく
 ても自然に続けられる、ということです。問題は、習慣化するまでやる
 気を維持できるか、ということになります。

 外国語の学習は、永遠の片思いです。決して満たされることはありませ
 んが、どうすればやる気をつぶさずに、長続きさせられるでしょうか。

 まず具体的で明確な目標を設定することが、やる気を維持するには大事
 です。TOEICや英検でもいいでしょう。Versant 
  http://www.versant.jp/test_content.html#03
 という、日本人が苦手な、スピーキングを主体とした試験もあります。
 発音の正確さや反応速度が評価されます。英会話に自信のある人には特
 にお勧めです。同時通訳の需要から分かるように、人間はどうもせっか
 ちなようで、ゆっくりした会話は耐えがたいようです。会話の内容はも
 ちろんですが、反応速度が遅いと取り残され、実際の会話についてゆけ
 ません。反応速度は、パーティーなどでの英会話で「トルネード英会話」
  http://tran.blog.shinobi.jp/Entry/464/
 を実践するには必須です。

 ただ、パーティーで外国人に話しかけるには、やる気に加えてある種の
 思い切り、「気合い」が必要でしょう。これは、リスニングよりも、単
 語や文法の暗記などよりも、2000倍くらい重要です。逆に、この「気合
 い」がないと永遠に語学は進歩しないと断言できます。「遠慮」をして
 せっかくのチャンスを逃している人を見ると、「もったいないな」と思
 うと同時に、「かわいそうだけどこの人はこれ以上、上達しないな」と
 思うのです。私自身も昔はそれほどパーティー好きでもありませんでし
 たが、今ではリラックスして楽しむ余裕ができました。それは、意志が
 通じたコミュニケーションの小さな喜びが積み重なって、次のやる気に
 つながっているからでしょう。未知の価値観に対する好奇心はだれしも
 持っているはずです。パーティーで英語を話せそうな外国人がいれば、
 ちょっとだけ勇気を出して話しかけてみてください。彼らもきっと話し
 相手を求めています。

 次に、英語で楽しいこと、夢中になれることを常に見つけるようにしま
 しょう。それさえできれば、やる気は続きます。好きな映画、海外ドラ
 マ、歌手、小説、自分の専門分野など、探せばいくらでもあります。
 NHKの語学番組が美男美女を起用するのは、正しいやり方です。

 また、自分のレベルと違いすぎる内容ばかりをむりやり詰め込むのはよ
 くありません。とはいえ、楽に読め、聞きとれる内容ばかりでも上達し
 ないでしょう。楽にこなせる内容と、少し高度な内容の両方をバランス
 よく吸収することが大切です。

 まだご紹介したいことはたくさんあるのですが、2003年10月24日から62
 回、6年にわたって書かせて頂いたこのコラムも今回が最後です。他の
 連載陣の皆さまのコラムのバックナンバーも以下から読めます。この機
 会にチェックされてはいかがでしょうか。
  http://www.tranradar.net/column/index.html

 長い間、ご愛読ありがとうございました。またどこかでお目にかかりま
 しょう。良い年をお迎えください!

 ご質問、ご感想、ご要望、ご意見などがありましたら、
 tran@nichigai.co.jpまでどうぞ!
《このコラムは、音声認識ソフトで入力し、音声読み上げにより校正し
 ています》

【著者プロフィール】
   山本 ゆうじ(やまもと・ゆうじ)
   言語・翻訳コンサルタント。国際学校 UWC イギリス校で二年間学び、
  筑波大学を経て、シカゴ大学人文学修士号を取得。
  日英仏語で、美学・比較文学・芸術学・文章技法などを学ぶ。

  transPC  【実務翻訳】	  http://transpc.cosmoshouse.com/
  秋桜舎  【文芸談義/文芸翻訳】http://cosmoshouse.com/

 『世界に通じる学校――国際学校 UWC の異文化理解教育』発売中
  山本ゆうじ〔編著〕2004.4 アルク刊 A5/199p \2,310(税込)
  http://www.bookpark.ne.jp/cm/pudding.asp?content_id=ALCB0025
   ↑mixiやブログなどもありますので、よろしければこちらもどうぞ!
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 只今、日外アソシエーツのホームページでは、期間限定セット商品を
 50%引きでご提供中です。「日本人の姓/名のよみを調べるなら」「西
 洋人名のよみかたなら」「英文学の背景・語源を知るなら」など、全18
 セットをご用意。また、お客様が自由にタイトルを選択できるフリーセ
 ット(7点以上お買い上げで割引)もございます。

 2010年3月末日までです。ぜひこの機会にまとめてお買い求めください。
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 http://www.nichigai.co.jp/sales/set/index.html
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■ 後 記

 家で最近、首にバンダナを巻いて過ごしています。何となくウェスタン
 な雰囲気です。腰に拳銃でもぶらさげてやろうかと思います。ところが
 この格好、家族には不評です。次男(15歳)には「どーしたの?」と真
 顔で心配されました。娘(13歳)はすれ違っても目を合わしてくれませ
 ん。しかし、さすがは家内です。私がバンダナを巻始めた理由をずばり
 言い当てました。「トシで首元がさぶいんでしょう」。
 年末、帰省する長男(17歳)はなんというでしょうか。楽しみでありま
 す。
                              (青)
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 なお、バックナンバーはこちらでご覧いただけます。
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 No.202 に対するご意見ご要望はこちらまでお寄せください。
  tran@nichigai.co.jp ※ 提供 日外アソシエーツ株式会社
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 ※ 発行人 森本浩介  ※ 編集スタッフ 青木竜馬/竹村雅彦
 【バックナンバー】
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