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 ■ 仕事としての翻訳                  井口 耕二
 ■ 電子辞書SHOPからのお知らせ
 ■ 翻訳読書ノート47                  北田 敬子
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 ■ 仕事としての翻訳                  井口 耕二

 ◆仕事の始め方

 ●契約書

 登録時に提出する書類の中に「契約書」がある場合もあります。

 ◎業務委託契約書

 翻訳会社から翻訳者への発注は翻訳業務の委託ということになるので、
 業務委託契約書を結んでおくのが本来あるべき姿です。現実にはその
 ような書類が用意されていないことも珍しくないのですが。

「お願いします」「分かりました」という口頭の約束でも法的には契約が
 成立しますし問題がないときはそれでいいのですが、万が一、何か問題
 が起きたとき言った・言わないの話になってもめないように作っておく
 のが契約書です。契約を締結というとすごいことのようですが、実は意
 外なほど当然のことしか書いてありません。

 契約書というのは契約当事者、両者が取引について合意した内容を書く
 ものなので、本来は、両者が話し合って内容を詰めてゆくものです。た
 だ、現実には、各翻訳会社が用意しているものに翻訳者がサインすると
 いう形が一般的です。

 形式は、普通、契約当事者、両者について、それぞれが履行すべき義務
 と相手に要求できる権利を列挙する形になっています。長さは1ページ
 の簡単なものから10ページ超の詳細なものまで、会社によって異なりま
 す。

 簡単なものがいいわけでも、詳細なものがいいわけでも特にありません。
 ポイントは「両者について」という点です。発注時には翻訳会社がきち
 んと指示を出す、翻訳者は納期までにきちんと仕上げて納品する、翻訳
 会社は納品から一定期間内に検収し、さらに一定期間のうちに支払いを
 するなど、両者の義務が明記されていることが大事です。義務を履行で
 きない場合のペナルティも双方について規定してあるべきです。ただ、
 契約当事者の片方が作る契約書というものは、作る側に有利な内容にな
 りがちです。ひどい場合は、翻訳者の義務と翻訳会社の権利だけがずら
 っと並んでいるものもあります。

 不公平な契約だと思えば、内容の修正をお願いしましょう。念のため翻
 訳者仲間に相談する、できれば市役所などで行われている無料の法律相
 談でいろいろと確認するなどしてから翻訳会社との交渉にはいるほうが
 いいでしょう。

 交渉しても、どうにも納得できない内容にしかならない場合は契約を見
 送ることをお勧めします。翻訳者をパートナーだと考えていれば公平な
 内容になりますし、顧問弁護士に契約内容を確認してもらうだけでもそ
 こそこ公平な内容になります。不公平な契約書を出してくるということ
 はそのいずれでもないわけですし、交渉しても不公平が解消されないと
 いうことは翻訳者をパートナーと認識していないことの証拠だと言って
 もいいでしょう。世の中に翻訳会社は山のように存在しますし、公平な
 内容の契約書を用意しているところもたくさんあります。さっさと次を
 探しましょう。

 ◎守秘義務の契約書・宣誓書

 業務委託契約書のほかに、守秘義務を規定した契約書や宣誓書も用意さ
 れていることがよくあります。翻訳の仕事は一般公開前の情報が含まれ
 ていることが多く、それが漏れるとソースクライアントに大きな損害が
 発生することもあるからです。

 題名が「契約書」でも「宣誓書」でも、法的には「契約書」です。守秘
 義務の場合、ほとんどが受注側の義務となるため、宣誓書という形を取
 ることがあるだけのことです。

 こちらもポイントは「公平か」という点です。

 業務委託契約書はそれなりにきちんと作っている会社でも、守秘義務の
 契約書や宣誓書は片手間で作るのかひどい内容になっていることが珍し
 くありません。たとえば、(↓)のようになっていたりします。

  ・当社から渡すものすべてが機密情報である
  ・案件終了後も守秘義務は継続する
  ・機密情報漏洩で損害が発生したら翻訳者が責任を負う

 この内容には、(↓)の問題点があります。

  ・渡されたとき公知のもの、渡されたあと公知になったものにも守
      秘義務が発生する
  ・翻訳会社やソースクライアント、あるいは第三者から機密が漏洩
      しても翻訳者が責任を負うことになる

 この点について問い合わせると、「公知のものに守秘義務はないし、翻
 訳者以外が機密を漏洩した場合に翻訳者が責任を問われることはない。
 常識で判断して欲しい。(だからこのままサインすればいい)」という
 回答が返ってきたりします。

 そういう回答で納得あるいは安心してサインなどしないように。最初に
 書いたように、契約書というのは当然のことを書いておくものなのです。
 逆に言えば、当然のことなら契約書にそう書けばいいだけのこと。それ
 を書かないのは裏の意図があると疑われても仕方がないと言えます。だ
 いたい、「常識で判断」すればいいのなら守秘義務の契約書や宣誓書な
 ど不要です。翻訳の仕事をすれば守秘義務があるのは常識ですからね。
 そういう話をしても修正に応じないようなところがあれば契約せず、
 別の取引先を探すことをお勧めします。

 ◎契約書の活用方法

 契約書についてのあれこれ、なんだか面倒だなと思われたかもしれませ
 ん。面倒といえば面倒ですが、別の見方もあります。

 どのような契約書を作っているかで、取引先が翻訳者をどう位置付けて
 いるのかなどがわかるわけです。一方的な契約書を作るところは、だい
 たい取引も一方的です。契約書なんて建前ですから、契約書が公平でも
 取引関係のやりとりが一方的なところはありますが、建前を取りつくろ
 うことさえしていなければ論外と思ってまず間違いないでしょう。契約
 書の内容や契約締結時の交渉というのは、自分が取引すべき相手かどう
 かを見極める一助となるわけです。

 取引先を選べる、こことは取引したくないと思えば断れるというのがフ
 リーランス翻訳者の特権です。その特権を活用し、仕事のパートナーと
 して翻訳者を見てくれるところを探して取引することをお勧めします。

 ☆本編及びバックナンバーはこちら↓
 http://tran.blog.shinobi.jp/Category/16/

【著者プロフィール】
  井口 耕二(いのくち・こうじ)a.k.a. Buckeye
  技術・実務翻訳者、翻訳フォーラム共同主宰、社団法人日本翻訳連盟
  常務理事
  高品質・高価格をめざして翻訳の現場で日々努力するとともに、オン
  ライン・オフラインの各種記事、セミナーなどさまざまな場で翻訳者
  という立場からの提言や主張を行っている。
  著書に『実務翻訳を仕事にする』(宝島社新書)、訳書に『スティー
  ブジョブズ−偶像復活』(東洋経済新報社)、『ウィキノミクス−マ
  スコラボレーションによる開発・生産の世紀へ』(日経BP社)などが
  ある。
  ホームページURL: http://buckeye.way-nifty.com/translator/
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 ■ 電子辞書SHOPからのお知らせ

 ★ Windows 7 対応について
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 新OS「Windows 7」で今までの辞書が使えるかどうかについて、わかっ
 た分は以下の通りです。

 ・「EPWING版」用検索ソフト「ViewIng Ver2.43/2.44」
   メーカーによる動作保証はされていませんが、ほぼ問題なく使用で
   きます(私もやってみました)。詳細は下記をご参照ください。
   (「Vista」についての説明ですが、同じだそうです)
    http://www.est.co.jp/products/viewing/vista.htm

   なお、それ以前のバージョンは「Vista」以降には未対応ですが、
   Ver2.43/44へ無償バージョンアップできます。(上記サイトの最後
   に記載されています)

 ・「Jamming」
   作者のホームページによれば、特に問題なく使用できるそうです。
    http://dicwizard.jp/jamming.html

 ・「Oxford English Dictionary on CD-ROM Ver.4.0」
   Windows 7(32 bit版)での動作確認が取れています。 
   Windows 7(64 bit版)では、インストール後に起動する際に時々
   “This program might not have installed correctly, reinstall
   with recommended settings...”というメッセージが表示されます。
   このメッセージが出ましたら「キャンセル」をクリックしていただ
   ければ、問題なくご利用になれます。 
    http://www.tranradar.net/oed_v4.html

   ちなみに 前版「OED Ver.3.1」も Windows 7(32 bit 版)で動く
   そうです(64 bit 版は不可)。

 ・「ロゴヴィスタ電子辞典版」
   対応しています(製品によりアップデートが必要です)。
    http://www.logovista.co.jp/detail/detail_jiten_viewer_wm.html

 ・「HD辞典シリーズ」付属の検索ソフト「DDviewer」
   ユーザー登録すれば、対応している最新バージョンに無償アップデ
   ートできます。
    http://www.densijiten.co.jp/news/press.php?disp=detail&nid=182

 ・「対訳君シリーズ」
   一部モジュールを差し替えれば問題なく使用できます。
    http://www.mcl-corp.jp/software/faq.html

 ・「世界大百科事典第2版&百科事典マイペディア デジタル地図帳付き」
   Windows 7 動作確認済みだそうです。
    http://www.kn-concierge.com/sedaiinfo/

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  ※連載毎に読み返せるので新たな発見があります。
 ※コラムに対するご感想・ご意見お待ちしております。
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 ■ 翻訳読書ノート47                  北田 敬子

「亜大陸の白虎」

 評判の映画を見逃すと、DVDとなりレンタルが始まるのが待ち遠しい。
 最近漸く『スラムドッグ・ミリオネア』を見た。スラム育ちの若者がテ
 レビのクイズ番組で全問正解し、大金を手に入れる話と言えば単純化の
 しすぎだが、まさに天から垂れた一縷の糸にすがって地獄を脱出するよ
 うなスリルと光明を感じさせられるドラマだった。複雑なインド社会の
 一端を描く卓抜な作品といえよう。しかし、更に深くその世界に踏み込
 むことを望む人に、『グローバリズム出づる処の殺人者より』(アラヴ
 ィンド・アディガ著 鈴木恵訳 文藝春秋社 2009)は恰好の小説であ
 る。

 題名の通り、これは書簡体モノローグである。田舎町の車夫の息子が、
 運転を習い覚えるチャンスを得て資産家の運転手に雇われ、インド社会
 の闇と光を召使いとして観察する。屈辱的経験を重ねた末、殺害した主
 人から奪った金を元手に起業家として成り上がり、訪印する中国首相に
 宛てて社会構造、家族制度、カースト制、伝統的価値観とその変化、都
 市と田舎、豪邸とスラムなど、インドの実像を克明に解説するという趣
 向だ。気鋭のジャーナリストである著者の描写はディテールまで鋭い。
 民主主義的選挙の実態(賄賂、饗応、不正投票など)をはじめ、都市に
 建設の進む高層マンションの内部(地方豪邸の台所面積にも満たないフ
 ラット、召使い専用の地下室のありさま、肥満した金持ちのランニング
 の滑稽など)と足下の建築現場の汚濁、また人命のとてつもない軽さ
(轢き逃げ事故、結核死、報復による惨殺など)、いわゆる先進国のお
 上品な常識の理解を遙かに超えている。

 これは過去の歴史物語なのか、それとも最新の現代小説なのか。その答
 えは紛れもなく後者だろう。前述の映画で、スラムに育つ主人公は躊躇
 いなく糞壺に飛び込んだ。この小説で、主人公は囚われの「鶏籠」から
 抜け出す。ジャングルで一世代にたった一頭しか現れないホワイト・タ
 イガー(白虎)との自負あるいは妄想を胸に、託された幼い甥以外すべ
 ての係累を犠牲にしても、使用人や奴隷としての人生と決別する。たと
 えそれが殺人の上に成り立つものであったとしても。彼は光の世界を牛
 耳るものたちが人殺しと無縁だとは思っていない。皆、誰かしらを踏み
 つけて特権を得たことを熟知している。だから、現代の「罪と罰」に応
 報の必定は描かれない。

 インドをカースト制度と家族の絆に縛られた究極の格差社会と断定する
 のはもはや旧来の偏見にすぎないのかもしれない。だが、内側にあって
 その実情を丹念に描写する文章を読むと、所詮フィクションと侮れない
 リアリティーの充満に圧倒される。インド・中国いずれかが近未来にア
 ジアの覇者となるのか否か、映画や小説から想像できることは多い。台
 頭する世界のパワーを見誤らず読み解くことが、日本語の読者にも必須
 と確信させられた。

 【著者プロフィール】
   北田 敬子(きただ・けいこ)
  東洋学園大学・現代経営学部教授
  東京女子大学英文科卒業後、東京都立大学修士課程英文学専攻修了。
  バージニア大学教育学部にて在外研究。
  専門は英語文学、言語とコミュニケーション
  ホームページURL http://www.kitada.com/keiko/
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 ■ 後 記

 2009年の私を振り返ります。振り返りますと、どうもバカバカしさが大
 いに足りなかったという反省点がまず頭に浮かびます。はっきり言って
 守りに入っていました。こんなバカなことを言っては、本当にバカだと
 思われるのではないか、と。
 本当にバカなのになにをかいわんやです。
 というわけで、2010年のテーマは「バカバカしさへの回帰」です。
 ご期待ください。

 といいつつ、年内、もう一回配信します・・・
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 ※ 発行人 森本浩介  ※ 編集スタッフ 青木竜馬/竹村雅彦
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