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 ■ 仕事としての翻訳                  井口 耕二
 ■ 電子辞書SHOPからのお知らせ
 ■ 翻訳読書ノート46                  北田 敬子
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 ■ 仕事としての翻訳                  井口 耕二

 ◇ 仕事の始め方

 ●トライアル

 前回は、誰もが一度は通るであろう一般的なトライアルについて書きま
 した。今回は、翻訳者を続けていると遭遇することがあるパターンを紹
 介します。

 ◎再受験はできるのか

 トライアルに落ちたら、もう2度とその翻訳会社のトライアルは受けら
 れないのでしょうか。そんなことはありません。トライアルの目的は
「翻訳の力が一定レベル以上あるかないか」を判定することにあります。
 トライアルに落ちたというのは、その時点では一定レベル以下だと判断
 された−それ以上でも以下でもありません。力がつけばまた受けてかま
 わないし、合格すれば普通に仕事へとつながります。

 ただし、実力がはっきりとあがるにはかなりの時間がかかる点は忘れな
 いこと。落ちた翌月にもう一度申し込むなどは非常識です。くり返し受
 けたら合格率が上がるわけではありません。通る人は通るし落ちる人は
 落ちる。トライアルとはそういうものです。

 じゃあ、どのくらいの期間をおけばいいのか……そう聞かれても答えよ
 うがありません。半年で大きく伸びることもありますし、5年たって変
 わらないこともあります。10年たって下手になることだってあります。
 でもまあ、トライアルを課す側の手間などを考えれば、少なくとも1年、
 できればもう少しあけるべきでしょうね。

 少し視点を変えて考えれば、同じところを受けなければならない理由は
 ないことが多いと思います。トライアルを受ける先はいくらでもあるの
 ですから、「どうしてもここ」と思いこまず、あちこちに当たってみる
 のがいいと思います。

 ◎経験者のトライアル

 翻訳業界には、ある程度以上の経験を積んだプロにトライアルをさせる
 のは失礼だという考え方があるようです。翻訳者のコミュニティなどで
「経験X年の自分にトライアルをやれとは失礼な会社だ」と憤慨してい
 る人を見ることがあります。新しい翻訳会社の方から「申し訳ないので
 すが、当社規定のトライアルを訳していただけませんか」と聞かれるこ
 とがあるのも、経験が長いプロにトライアルを申し出ると怒られること
 があるからでしょう。

 この背景には、おそらく、実力は経験が証明しているから改めてトライ
 アルで実力を確認する必要などない、であるのにトライアルを課すのは
 バカにしているからだという流れがあるものと思います。

 でも実はこの考え方、私にはまったく理解できません。新しいところと
 取引を始めるときには「なるべくトライアルをお願いします」とこちら
 から頼むくらいですから。

 まず、怒ることにデメリットはあってもメリットはないと思います。自
 分の中で憤慨しているだけでも翻訳の作業に悪影響が出るなどいいこと
 はありません。相手に怒りをぶつければ印象を悪くするだけです。

 トライアルを課す側の要求レベルがさまざまだという問題もあります。
 まず、会社による違いがあります。違いは、A社よりもB社のほうが甘
 いということもありますし、重視するポイントが違うということもあり
 ます。また、同じ会社でも、「そのうちお願いすることがあるかもしれ
 ないから」というケースと「これから始まるプロジェクトを頼める人を
 集めたい」というケースでは要求水準が異なるのが当たり前です。他社
 で仕事をしていても、その会社にとって仕事を頼める人かどうかはわか
 りませんし、そのプロジェクトで使える人かどうかもわからないのが当
 たり前なのです。

 冒頭の話は、経験年数という実績から、そういう違いがあっても全部ク
 リアできるレベルだと判断しろ、そうしないのはけしからんということ
 だろうと思いますが、現実を見るとそうも言えないことが分かります。

 翻訳の世界は実力勝負。訳文がすぐれていれば、あるいはボロボロなら、
 学歴も経歴も関係ありません。プロとして何年も食べているというのは、
 たしかに一定レベル以上の力を持つことの証明にはなります。でも、そ
 れ以上は何もわからないのです。10年、翻訳で食べていても駆けだしと
 同じようなレベルに留まっている人もいます。プロになってほんの数年
 でどんどん上手になってゆく人もいます。もちろん、これらを両極端と
 して、その中間にさまざまな人がいるわけです。「出版翻訳の実績があ
 れば違う」という人もいますが、現実には出版翻訳もピンキリです。出
 版された時点での品質もピンキリですし、そこまでに編集さんなどがか
 けなければならなかった手間もさまざま。最初から出版向けの品質を作
 り込める翻訳者だけが訳書を出すわけではありません。結局、なにがし
 かの形でトライアルをするしか初見の相手の実力を確認する方法はない
 わけです。

 詳しくは後述しますが、トライアルがあったほうが翻訳者にとっていい
 という側面もあります。

 なお、トライアルの形式としては、翻訳会社などが用意した課題を訳す、
 自分で選んだものの原文と訳文を提出するなどの方法があります。小さ
 な案件を翻訳会社の言い値でやってからその後のレートを決めるという
 方法も、トライアルの一種だと言えるでしょう。

 余談ですが……トライアルを受けろというのは侮辱だと感じる翻訳者が
 かなり多いという話、翻訳会社の人たちから聞くこともよくあります。
 そういうとき、そのあとには「そういう人にかぎって質がよくない」
「できる人はトライアルくらい、ささっと軽くやって出してくれる」と
 いう話が続きます。愚痴に近いことが多いので話半分に聞いたほうがい
 いと思いますが、少なくとも、いろいろな人がいることだけはたしかで
 しょう。

 ☆本編及びバックナンバーはこちら↓
 http://tran.blog.shinobi.jp/Category/16/

【著者プロフィール】
  井口 耕二(いのくち・こうじ)a.k.a. Buckeye
  技術・実務翻訳者、翻訳フォーラム共同主宰、社団法人日本翻訳連盟
  常務理事
  高品質・高価格をめざして翻訳の現場で日々努力するとともに、オン
  ライン・オフラインの各種記事、セミナーなどさまざまな場で翻訳者
  という立場からの提言や主張を行っている。
  著書に『実務翻訳を仕事にする』(宝島社新書)、訳書に『スティー
  ブジョブズ−偶像復活』(東洋経済新報社)、『ウィキノミクス−マ
  スコラボレーションによる開発・生産の世紀へ』(日経BP社)などが
  ある。
  ホームページURL: http://buckeye.way-nifty.com/translator/
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 今年で19回目を迎える日本翻訳連盟(JTF)主催の「翻訳祭」が
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  ※マツダホールより徒歩3分
  http://www.jtf.jp/jp/festival/festival_map.html
 【参加料金】
 ◎講演・パネルディスカッション:一般5,000円 JTF会員・学生3,500円
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 ■翻訳読書ノート46                   北田 敬子

「音楽の響く小説」

 上質の物語を読む時、読者は内的な旅をし、別の人生を生きている。読
 んでいる最中は書かれている言語の種類も意識しない。だが翻訳書には
 かすかなフィルターが掛かっている気のすることが多い。こんな日本語
 をしゃべる人がいるだろうかと時折訝しむことはあるにせよ、それを忘
 れさせる文章であるなら多少の違和感はむしろ作品の個性として受容で
 きる。『わたしを離さないで』(カズオ・イシグロ著 土屋政雄訳 
 早川書房 2006)はそんな本の一冊だと思う。

 クローン人間製造システムがあったとして、生まれた子供たちが成長し
 て「(臓器)提供者」、あるいはその「介護人」となって使命を果たす
 までをこの物語は描いている。散りばめられた暗示から次第にその設定
 は明らかになっていく。ごくありふれたイギリスの片田舎の若者たちに
 鬱屈はあっても、自分たちの特殊性を自覚する彼らには運命を変えよう
 とか逃げ出そうという意志は働かない。語り手のキャシーと、親友であ
 りライバルでもあるルースと、この二人と関わりを持つトミーの心の機
 微を中心に、外的にはあまり起伏のない彼らの日常が綿々とつづられる。

 若者たちは世間一般の人々と混じり合って生きる機会がないことを嘆き
 はしないが、「ポシブル」と呼ぶ自分たちの生命の元であったかもしれ
 ない人との出会いを密かに期待するところはある。予め定められた人生
 の中で彼らは健気に愛し合い、憎み合い、許し合う。人ならぬヒトから
 も自身の存在の意味を問う「心」を省けるはずはないと、彼らは静かに
 語り続けているようだ。運命執行猶予への仄かな希望が失われたとき、
 小説は終わる。

 クローン人間の成長という着想は荒唐無稽なのか、それとも現実味を帯
 びているのか?人権思想を生み、ダーウィンを生み、かつクローン羊の
 ドリーを生んだ国で書かれるべくして書かれたと思えば、日系英国人が
 作者であることに拘るのは的外れだろう。それが日本語に訳されて日本
 の読者に供される。これは間違いなく国境を越えた我らの時代の作品だ。

 実はイシグロの最新短編集『夜想曲集 音楽と夕暮れをめぐる五つの物
 語』(土屋政雄訳 早川書房 2009)の洒脱さに唆されて「もう一曲」
 と手にしたのがこの本だった。「わたしを離さないで」というのも曲名
 である。カセットテープでその曲を流して、命を授かる奇跡を夢想しな
 がら一人で踊り、一度は失ったテープをトミーとともに再発見するキャ
 シーの物語は、作中に描かれる湿地に打ち上げられた廃船や有刺鉄線に
 引っかかって風になびく漂流物と同様、うら寂しくもまた美しい。手の
 届きそうな戦慄すべき未来と、取り返しのつかない懐かしい過去は、音
 楽が与える夢と幻で緩やかに繋がっている。

 【著者プロフィール】
   北田 敬子(きただ・けいこ)
  東洋学園大学・現代経営学部教授
  東京女子大学英文科卒業後、東京都立大学修士課程英文学専攻修了。
  バージニア大学教育学部にて在外研究。
  専門は英語文学、言語とコミュニケーション
  ホームページURL http://www.kitada.com/keiko/
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 ■ 後 記

 一家団欒の夕食。話題がマイケル・ジャクソンの映画のタイトル"THIS
 IS IT" に及んだ。で、娘(中1)に尋ねられた。「あのさぁ、"THIS IS
 IT" ってどういう意味?」と。私と妻と次男(中3)は固まった。

 "THIS" も "IS" も "IT" も簡単な単語だ。この映画がマイケルの死に
 よって実現しなかったロンドンツアーの名称にちなんだものであること
 も知っている。しかしこの場合に "THIS IS IT" といわれ、どう訳して
 いいのやらさっぱりわからないのである。

 結果、正直(かつ卑怯)な私は「明日、英語の先生に聞きなさい」とス
 ルーパスすることとした。
 
 今晩、娘に先生がどう説明してくれたのか、それを聞くのが楽しみであ
 る。
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