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 ■ 仕事としての翻訳                  井口 耕二
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 ■ 「山本ゆうじの翻訳道具箱」(その60)       山本 ゆうじ
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 ■ 仕事としての翻訳                  井口 耕二

 ◇ 仕事の始め方

 ●トライアル

 履歴書、職務経歴書などを提出し、書類審査に通ればトライアルとなり
 ます。

 短い文章が送られてくるのでそれを訳して提出し、実力を確認してもら
 うわけです。試験のようなものだと考えればいいでしょう。

 自分の実力を正確に測ってもらうため、また、アピールしてのちのちの
 仕事につなげていくために注意すべき点がいくつかあります。
  ・指示に従う
  ・トライアル分野に注意する
  ・仕事をイメージした納品方法とする
  ・できる限りの努力をする
  ・仕事ベースになっても同レベルの仕上げをする

 ◎指示に従う

 「XXについてはYYとしてください」など指示がある場合はそれに従
 いましょう。

 仕事でもいろいろな指示を受けることがあります。そのような指示にき
 ちんと従って作業をしてくれる人かどうか、そういう能力の有無もチェ
 ックポイントなのです。注意しましょう。

 ◎名前を記入する

 トライアル訳文の最初に名前をかならず記入しましょう。

 募集があった場合のトライアルはもちろん、それ以外でも、採用担当者
 はたくさんの訳文を見ることになります。そのとき、履歴書などをはず
 し、訳文だけをまとめて見ることもあります。「訳文はとってもいいん
 だけど、これ、誰なんだろう」ということにならないように、名前を必
 ず記入しておきましょう。

 もちろん、別の形式が指示されていれば指示が優先です。

 ◎トライアル分野に注意する

 多くの翻訳会社が複数分野のトライアルを用意しています。
 分野は、アプローチした翻訳者が選ぶ場合と翻訳会社が選ん
 で送ってくる場合があります。

 後者の場合、自分の不得意分野が来てしまうことがあります。
 履歴書に得意分野とやりたいない分野を明記していても全然
 違う分野が送られてきたりするのです。

 不得意な分野が送られてきてしまったら、変更をお願いして
 みましょう。応じてくれることが多いはずです。「その分野
 の翻訳者が欲しいので、ともかく、送ったトライアルはやっ
 て欲しい」などと言われることもあります。そのような場合、
 まずは訳してみるのでしょう。あまりにできが悪かったら訳
 文の返送をやめればいいわけですから。

 ◎仕事をイメージした納品方法とする

 トライアルと仕事は基本的に同じです。特に指定がなければ、送られて
 きたファイルに上書きして送りかえしましょう。PDFなど上書きができ
 ないフォーマットのときは、Wordやテキストファイルにすればいいでし
 ょう。

 ◎できる限りの努力をする

 当然ですね。トライアルのできが悪ければ先はありません。できる限り
 よい状態に仕上げてください。

 原文の内容を理解する、専門用語を調べて確認する、自然な訳文に仕上
 げる……このあたりが一通りできていればトライアルに落ちることはあ
 りません。内容の理解と自然な訳文は翻訳の実力そのものですからトラ
 イアルになってあわててもどうしようもありません。ふだんの勉強が物
 を言う世界です。これに対して専門用語の調査・確認は、やるかやらな
 いか、の世界です。

 自動車関係の英日トライアルで自動車関係の本やパンフレットによく出
 てくるある単語(自動車ユーザー向けに一般に使われる用語)がでてき
 たことがあります。この程度の単語がだめなら文句なしに落とすのだが、
 これに引っかかる人がとても多いのだそうです。

 ◎仕事ベースになっても同レベルの仕上げをする

 翻訳会社の採用担当者から「トライアルのできはいいのに実際の仕事で
 ボロボロになる人がときどきいる」という嘆きを聞くことがあります。

 実際の仕事のできが悪ければ、すぐに仕事はこなくなります。「トライ
 アルは念入りに、ホンチャンの仕事はそれなりに」では継続受注など望
 めません。仕事になったら毎回がトライアルです。

 そうは言っても、仕事になると納期も厳しく、トライアルほど念入りに
 作業をすることは困難になります。その点は翻訳会社側でもわかってお
 り、若干の質の低下は織りこんでトライアルの合否や仕事の発注を決め
 ているのですが、その予想を大きく超えて質が低下する人がときどきい
 るわけです。

 トライアルの訳文を作るとき、「これと同等の訳文を自分は仕事で出し
 続けられるのか」と自問自答してみるといいでしょう。言い換えると、
 仕事になったときできないことはトライアルでもしないのが基本となり
 ます。「できる限りの努力をする」と矛盾するように感じるかもしれま
 せんが、そうでもありません。毎回の仕事で「できる限りの努力をする」
 のが翻訳という仕事ですからね。

 なお、ごくまれにですが、(↓)のようなことをする人がいると聞いて
 います。
  ・できる人に聞きまくる
  ・上手な人に訳してもらう
  ・数人で相談しながら訳す

 トライアルに落ちつづけるとこのような誘惑にかられるのかなと思いま
 すが、百害あって一利なしなのでやめておきましょう。我々の目的は、
 トライアルに合格することできなく、継続受注すること。そう考えれば
 このようなことに意味はないとわかるはずです。

 ☆本編及びバックナンバーはこちら↓
 http://tran.blog.shinobi.jp/Category/16/

【著者プロフィール】
  井口 耕二(いのくち・こうじ)a.k.a. Buckeye
  技術・実務翻訳者、翻訳フォーラム共同主宰、社団法人日本翻訳連盟
  常務理事
  高品質・高価格をめざして翻訳の現場で日々努力するとともに、オン
  ライン・オフラインの各種記事、セミナーなどさまざまな場で翻訳者
  という立場からの提言や主張を行っている。
  著書に『実務翻訳を仕事にする』(宝島社新書)、訳書に『スティー
  ブジョブズ−偶像復活』(東洋経済新報社)、『ウィキノミクス−マ
  スコラボレーションによる開発・生産の世紀へ』(日経BP社)などが
  ある。
  ホームページURL: http://buckeye.way-nifty.com/translator/
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 ■ 電子辞書SHOPからのお知らせ

 ★ 山岡洋一著「翻訳とは何か」
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 既に3ヶ月ほど前のことですが、山岡洋一氏の「翻訳とは何か」が増刷
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   四六判・290p 2001.8刊 定価1,680円(本体1,600円)
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 山岡さんのインタビュー記事もあわせてご覧ください!
 (このメールマガジンのバックナンバーです)
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 ■「山本ゆうじの翻訳道具箱」(その60)
  
 知識の宝が眠る場所――図書館を制す者は知識を制す

 最近、Amazonの電子書籍リーダーKindleが日本でも使えるようになりま
 した。現在は英語の書籍のみとはいえ、これで電子書籍の普及が刺激さ
 れるかもしれません。しかし電子書籍が普及しても、情報収集の手段と
 して図書館は重要です。私も、この11月に美術検定2級を受けるために、
 古今東西の美術史の本をいろいろ借りて勉強しています。今回は図書館
 の活用について考えてみます。

 ITなど、変化のペースが速い分野の翻訳はともかくとして、体系的な読
 書をして、専門知識の基礎を固め、あるいは専門知識をさらに深めるた
 めに図書館は重要です。図書館を使うことで、「積ん読」を防ぐことも
 できます。返却期限があるわけですから、「期限までには、がんばって
 何とか読み終えよう」という気持ちが生まれます。もっとも著者や翻訳
 者の立場からすると、自分がかかわった本は買ってほしくはあるのです
 が……(それで思い出しましたが、私が翻訳に参加しているフランスの
 マンガ雑誌『ユーロマンガ』第3巻は10月14日発売です)。
 http://tinyurl.com/euromanga-all

 さて、返却期限、貸し出しの冊数、閉館時間、休館日など、自分が使う
 図書館のスペックについて把握しておくのは基本です。また市立の図書
 館は、他の市や大学などと相互貸し出しを行っていることがあります。
 さらに、たいていの図書館では、インターネットから検索と予約ができ
 るはずです。書庫の間をさまようのは楽しくはありますが、それだけで
 は見つけられない本があります。「読みたい本のリスト」をうまく管理
 するとよいでしょう。図書館に行く前に、どの本を借りるかを把握して
 おくわけです。私はPDAで「本のリスト」を管理していますが、手帳な
 どでもかまいません。

「図書館に行くのが面倒」という方もいるでしょう。しかし借りた本は
 返すわけですから、「返したときにまた借りる」という循環ができれば、
 面倒ではありません。ここでも「読みたい本のリスト」が重要になりま
 す。また、インターネットで予約しておけば、その本を取りに行くだけ
 です。

 中には「本に書きこみをしたいので借りるのはいやだ」という人もいる
 かもしれません。ただ私の経験からは、本に直接書きこむのはほとんど
 意味がありません。どこに何を書いたかということを、あとで探すこと
 が難しいからです。別に読書ノートをつけることをお勧めします。でき
 ればパソコンで記録しておけば、古い記録でも検索できます。私は読書
 ノートをOneNoteなどのメモ取りソフトを活用して整理しています。ざ
 っと調べてみましたが、私の場合は1998年、つまり11年前の読書の記録
 が残っています。この時点の記録に対して全文検索はできますが、まっ
 たく未整理なので、すぐに活用するのは少し難しそうです。2000年以降
 のデータについては、読んだ本ごとにまとめられ、ある程度整理されて
 いるので、活用しやすくなっています。一時期、「読書データベース」
 を構築しようとした時期がありましたが、止めてしまいました。ひとま
 ず題と著者さえ正確に記録しておけば、本についてのその他の情報は、
 必要に応じて調べられるからです。重要なのは、むしろその本について
 の読書ノートそのもの、つまり得られた知識や感想のほうです。

 読書ノートに限らず、あらゆるメモについていえることですが、断片的
 な語句だけでなく、なるべく文として完成させたほうがよいようです。
 断片的な語句だけでは、あとで読み返しても意味不明になることがあり
 ます。それでは、そもそもノートをつけた意味がありません。また「特
 定分野(たとえば美術史)について読書を通して学ぶ」という主体的な
 目的意識をはっきりさせれば、まとまりのあるノートになり、価値が高
 まります。読書体験に明確な方向性が生まれると、一冊一冊の読み込み
 も深くなり、より充実した読書ができるわけです。

 さらに図書館では視聴覚資料も活用できます。古い名作の映画などは、
 一通りそろっているはずです。また質や量はいまひとつかもしれません
 が、図書館によっては外国語の資料が使えることもあります。近くの図
 書館に、どんな資料があるのか一度確認してみてはどうでしょうか。も
 しかすると意外な掘り出し物があるかもしれません。

 ご質問、ご感想、ご要望、ご意見などがありましたら、
 tran@nichigai.co.jpまでどうぞ!

《このコラムは、音声認識ソフトで入力し、音声読み上げにより校正しています》

【著者プロフィール】
   山本 ゆうじ(やまもと・ゆうじ)
   言語・翻訳コンサルタント。国際学校 UWC イギリス校で二年間学び、
  筑波大学を経て、シカゴ大学人文学修士号を取得。
  日英仏語で、美学・比較文学・芸術学・文章技法などを学ぶ。

  transPC  【実務翻訳】	  http://transpc.cosmoshouse.com/
  秋桜舎  【文芸談義/文芸翻訳】http://cosmoshouse.com/

 『世界に通じる学校――国際学校 UWC の異文化理解教育』発売中
  山本ゆうじ〔編著〕2004.4 アルク刊 A5/199p \2,310(税込)
  http://www.bookpark.ne.jp/cm/pudding.asp?content_id=ALCB0025
   ↑mixiやブログなどもありますので、よろしければこちらもどうぞ!

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 ■ 後 記

 最近「外国人力士はなぜ日本語がうまいのか」という本を読みました。
 “外国語習得”という観点からすると「な〜んだ、そんなこと?」とい
 う内容でしたが、大相撲ファンの私にとって面白かったのは、刊行当時
 (2001年)まだ入幕したてだった朝青龍が“向上心があり、親方の言う
 ことをしっかり聞くまじめな好青年”として書かれていたこと。もちろ
 んそれは嘘ではなかったのでしょうが‥
                              (み)
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 ※ 発行人 森本浩介  ※ 編集スタッフ 青木竜馬/竹村雅彦
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