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 ■ 仕事としての翻訳                  井口 耕二
 ■ 電子辞書SHOPからのお知らせ
 ■ トランネット便り 〜 ロンドンブックフェア2008
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 ■ 仕事としての翻訳
                            井口 耕二

 ●翻訳業界入門−翻訳という仕事の種類

 この辺りはもうご存じの方が多いかもしれませんが、念のため、簡単に
 まとめておきます。

 仕事としての翻訳といっても、その内容も区分の仕方もいろいろとあり
 ます。

 ◎ジャンル

 まず、産業翻訳(実務翻訳)、出版翻訳、映像翻訳という分け方があり
 ます。

 産業翻訳や実務翻訳とは、企業活動に伴う文書(マニュアル、論文、特
 許、契約書、パンフレット、レターなど)を翻訳するもの。仕事量が多
 いことから、従事しているプロ翻訳者の数が一番多い分野です。仕事の
 割り振りを行う翻訳会社が数多くあることもあり、新規参入も一番容易
 です。なお産業翻訳では、普通、翻訳者が納品した訳文をもとに最終的
 な文書が作られます。つまり翻訳者が訳したあと、最終調整が入ります。
 そのようなこともあって、訳者の名前が表に出ることはまずありません。

 出版翻訳は書籍の翻訳をするものです。一般に翻訳と聞いた人が最初に
 思い浮かべるのが出版翻訳ですし、翻訳を志す人の中にも出版翻訳にあ
 こがれる人がたくさんいます。しかし、ジャンル全体の仕事量があまり
 多くないこと、求められる翻訳力の最低ラインが産業翻訳よりも高いこ
 と、報酬が産業翻訳より少なくなりがちなどの理由から、従事している
 人は多くありません。なお出版翻訳では、編集者や校正者と協力しつつ
 翻訳者が最終的な訳文へと仕上げて行きます。つまり訳者が最後まで責
 任を持って訳文を仕上げること、それもあって訳者の名前が表に出ると
 いう特徴があります。

 映像翻訳は字幕や吹き替えなど、映画やテレビ番組、ウェブ動画などを
 取り扱うものです。メディア翻訳などと呼ばれることもあります。紙媒
 体で流通するものと異なり、字数に制限があったりします。また翻訳に
 使用するソフトも字幕ソフトと呼ばれるものを使うことが多く、他分野
 とは異なるスキルが要求されます。

 ◎分野

 産業翻訳については、世の中で産業と呼ばれる分野がすべてあると言っ
 ていいでしょう。IT、電気・電子、自動車、航空宇宙、建築・土木など
 の工学系からメディカル、経営、金融、経済など、また、環境などのよ
 うに技術と政策が複合しているものなど。細かく分け始めたらきりがあ
 りません。また、特許のように分野横断的に見えるものもありますが、
 これも実際には「〜分野の特許」といった具合に細かく分かれていると
 考えるべきです。

 基本的には、自分に興味が持てる分野、他人よりも得意だと言える分野
 を専門として翻訳します。ただし分野によっては、仕事量が多かったり
 少なかったりします。いずれにせよ、翻訳者側が「自分の専門はここと
 ここ」と決め、そこに当てはまる仕事を請けるというのが一般的です。

 出版は、フィクション、ノンフィクションに大きく分かれます。さらに、
 フィクションから文芸、SFなどと分かれていきます。ノンフィクション
 も下位分類があります。専門書系は、産業翻訳と同じように考えればい
 いでしょう。伝記も、各業界の話がぽろぽろと出てくるので、自分の専
 門やそれに近いものを訳すことになります。

 映像翻訳も取り扱う内容によって分野が異なると考えるべきですが、実
 際には、ある程度、幅広く対応しないとスケジュールが埋まりにくいよ
 うです。ジャンル全体の仕事量があまり大きくないので、細かく分野を
 選ぶことがしにくいわけです。

 ◎言語

 日本での仕事は、基本的に外国語と日本語をつなぐ翻訳となります。

 仕事量は英語が断トツ。そのため、自分の専門分野を定めて勉強し、知
 識を蓄積して品質の向上を図ることができます。一方、従事する翻訳者
 の人数も英語が断トツ。そのため競争が激しく、特に駆け出しのころに
 は「翻訳者の代わりならいくらでもいる」という状況で仕事をしなけれ
 ばなりません。

 仕事量が次に多いのは中国語でしょう。分野を幅広く対応すれば、中国
 語の翻訳だけで生計を立てることが可能です。

 英語・中国語以外の言語は基本的に仕事量が少なく、その言語の翻訳だ
 けで食べていくことは難しい状態です。そのかわりできる人が少なく、
 単価が高めになるというメリットもあります。そのため、英語の翻訳を
 しつつ、その他の言語の仕事もするという形が普通です。

 ◎翻訳方向

 翻訳方向は、外国語→日本語か日本語→外国語になります。一般に翻訳
 は外国語→母語の向きにするべきと言われていますが、日本語ができる
 外国語ネイティブが少ないため、日本語については両方向とも基本的に
 日本人翻訳者が翻訳しています。

 ◎翻訳方法(ツール)

 仕事としての翻訳は、アウトプットさえきちんとしていれば途中経過を
 問われないものが大半です。しかし、一部、一定のソフトウェアツール
 を使うことが前提となる仕事があります。その代表格が、翻訳メモリと
 呼ばれるソフトウェアを使うローカリゼーションです。

 翻訳メモリとは、原文と訳文のセットをデータベースとして記録してお
 き、似た原文が出てきたとき、過去の訳文を提示してくれるツールです。
 似たような文がくり返し出てくる場合や旧版の改訂などで威力を発揮し
 ます。また、大量の文書を大勢の翻訳者で処理するようなケースに対応
 した機能も用意されています。このため、マニュアルを含むソフトウェ
 アのローカリゼーション(現地語化)では必要不可欠なツールとなって
 います。このような分野の仕事をしたい場合は、ツールがきちんと使え
 ることが必要です。

 ◎実際の仕事の仕方

 翻訳の仕事にはさまざまな分類がありますが、実際にどの分野を仕事と
 するのかは翻訳者ごとに異なります。専業翻訳者として一人前に稼いで
 いる人の中にも、たとえば、証券分野の一部のみを専門とし、その英日
 しかやらないというように分野などを極端に絞りこんだ翻訳者がいたり
 します。逆に、言語は英語(英日・日英)と仏語に対応し、映像翻訳、
 出版翻訳(フィクション)、産業翻訳に加え、通訳までしているという
 幅広い人もいます。

 どちらがいいとか悪いということはなく、あくまで各人のスタイルです。
 大事なのは、自分の強みを生かし弱点を避けられるスタイルを考え、そ
 れを実現していくことだと思います。

【著者プロフィール】
 井口 耕二(いのくち・こうじ)a.k.a. Buckeye
 技術・実務翻訳者、翻訳フォーラム共同主宰、社団法人日本翻訳連盟常
 務理事
 高品質・高価格をめざして翻訳の現場で日々努力するとともに、オンラ
 イン・オフラインの各種記事、セミナーなどさまざまな場で翻訳者とい
 う立場からの提言や主張を行っている。
 著書に『実務翻訳を仕事にする』(宝島社新書)、訳書に『スティーブ
 ジョブズ−偶像復活』(東洋経済新報社)、『ウィキノミクス−マスコ
 ラボレーションによる開発・生産の世紀へ』(日経BP社)などがある。

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 ■ 電子辞書SHOPからのお知らせ

 今回はちょっと違うものをご紹介します。

 ★ 日外アソシエーツ・春の定番書籍「BOOKPAGE 本の年鑑2008」
   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 これは、昨年1年間の間に刊行された新刊書65,000冊の目録で、本の並
 べ方が“書店の棚を見るよう”になっていることと、要旨や目次、小説
 のあらすじまで紹介されていることが特長です。
 もちろん字ばっかり(ごくたまに表紙写真があるものもある)なのと、
 昨年の新刊だけしか載っていないので、現実の書店さんとは違うのです
 が、それにしても、本好きの人ならわくわくする世界がそこにはありま
 す。
 たとえば「語学・会話」というカテゴリはそれだけで67ページ。1ペー
 ジに20〜30冊の本が載っているので、少なく見積もっても昨年1年間だ
 けで1300冊以上の新刊が出たということになります。その中は言語学の
 学術書から英語学習法の本、クロアチア用旅行会話集まで実にさまざま。
 これらをすべて目に見えるように置いている書店さん、そうそうないの
 ではないでしょうか。
 また、目録部分のほかに「2007年ベストセラー」「2007年の主な文学賞」
 「事項名索引」「書名索引」「著者名索引」がついており、「文学賞」
 というものにほとんど興味のない私がそのページから“是非読んでみた
 い本”を見つけてしまいました(その本は3つも賞をもらっていたのに、
 私はタイトルすら知らなかったのでした)。
 個人で購入するには大きさ・お値段がちょっと‥ という方は、お近く
 の図書館でご利用ください。もし図書館になかったら、リクエストして
 くださいね!

  「BOOKPAGE 本の年鑑2008」
    定価19,950円(税込) 2008.4刊/B5・2,790p(2分冊)
    ISBN 978-4-8169-2104-9
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 ■ トランネット便り 〜 ロンドンブックフェア2008

 国際的図書展として定着したロンドンブックフェア(以下、LBF)が、
 今年も4月14日からの3日間、ロンドンにある見本市施設「アールズ・コ
 ート展示センター」で盛大に開催されました。10月のフランクフルトブ
 ックフェアから半年後というタイミングもあって、権利売買の商談を目
 的に、世界中から出版社員、著作権エージェント、作家など、様々な関
 係者が一堂に会し、来場者数は3日間で延べ2万人を超えるほどに達しま
 した。

 今回は普段、関係者以外はなかなか知ることのできない現地での模様を
 お伝えします!

 ▼続きはこちらのhtml版をどうぞ
 http://www.trannet.co.jp/pre_up/news/jwh_net/report/lbf08/lbf2008_update.html

 ☆海外出版を実現するためのプロモーションサイト
 【Japanese Writers’House 】では大谷ゆみこ氏の『雑穀の書』の版権
  を海外に紹介しています
  http://www.trannet-japan.com/ep/tjc_rights_dtl.asp?rt=05000010
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    三谷康之〔著〕 日外アソシエーツ〔発行〕 2007.12 A5・480p

 詳しくは↓をご覧ください
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 イギリス好き、英文学好き、外国映画好き、そして西洋建築好きな方に
 はたまらない1冊です。
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 ■ 後 記

 司馬遼太郎の『戦車・この憂鬱な乗物』という随筆によると、陸軍戦車
 隊では、ネジマワシを柄付螺廻(エツキラマワシ)、ミシンを縫穿機
(ホウセンキ)、スリッパを上靴(ジョウカ)、ズボンを袴(コ)と呼
 んだという。更に言えば、アクセルは噴射践板、クラッチは連動板、ハ
 ンドルは転把と言ったそうだ。

 ところで用語といえば「後期高齢者」である。役所の感覚といってしま
 えばそれだけのことだ。しかし、発案する者がいれば承認する者もいた
 はずで、そういった過程を経てもなお「後期高齢者」という言葉が作り
 出されていく感覚は恐ろしい。

 司馬は戦後自動車を運転しようと思ったことがないという。それは「噴
 射践板や連動板、転把といったふうのあんな奇怪なもの」に二度と関わ
 りたくないからだという。関わりたくないのは操作の煩わしさなのか、
 それともアクセルを噴射践板と呼ぶよう言語感覚につきあわされた記憶
 が呼び戻されるからなのか。

「後期高齢者」。
 司馬遼太郎が生きていたら、このことをどの様に論じただろうか。

                              (青)
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