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    ┏┏┏┏     No.92/2005.10.27

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 ■ 地理的感覚について                 田村洋一
 ■ 電子辞書SHOPからのお知らせ
 ■ ボビーが胴上げされて思ったこと
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 ■ 地理的感覚について                 田村洋一

 ●「南アジア」とは?

  国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)が「World Disasters Report 2005」
 の中で2004年の世界の自然災害による死者数が25万人を越えたと発表し
 た直後の2005年10月8日、カシミールでM7.6という大地震が発生し、大
 きな被害が出ています。2週間後の10月22日現在も被害の全容は正確に
 は把握されていません。被災地が尾根筋の入り組んだ急峻な山岳地帯で、
 土砂崩れのため交通が完全に遮断されてしまったためです。国連の救援
 責任者は「あの津波を上回る物資補給の悪夢だ」と悲鳴を上げています。
 ヘリコプターが到達できない場所へは山道をロバで運ぶしかないのです。
 判明している死者は約7万9千人、家を失った人は330万人、孤立して救
 援困難な集落1万5千個所、という数字が発表されています。2週間に
 750回以上の余震が続き、雪の季節が近づく中で状況が懸念されます。

  さて、今回のテーマは地震そのものではなく、その被災地の場所につ
 いてです。最初に BBC のニュースを耳にしたとき「South Asia で大地
 震」と言っているので、私は「またインドネシア?」と思ったのですが、
 これがカシミールとわかり何か釈然としない印象を受けました。ここは
 「南アジア」なのでしょうか。震源地を米地質調査所(USGS)のサイトで
 確認すると北緯35度、東経74度の辺りで、これは広島市や堺市とほぼ同
 じ緯度になります。ヒマラヤ山脈のさらに北西に連なるカラコルム山脈
 の外縁部で、山好きの人ならよくご存知の魔の山「ナンガ・パルバット」
 (Nanga Parbat:8125m)の西100kmほどのところです。このカシミールは
 インドとパキスタンの最北部一帯で、東は中国のシンチアンウイグル自
 治区、北はタジキスタンのパミール高原、西はアフガニスタンです。
 私の感覚では「南」とは思えません。「中央アジアの南だから」という
 意味なのか?

  実は「South Asia」という表現は英国の植民地統治、すなわち1878年
 から1948年までの「British Raj」の遺物です。該当する地域は「インド
 亜大陸」(Indian subcontinent)に等しく、具体的にはインド、パキスタ
 ン、バングラデシュ、スリランカの4ヶ国で、これにネパールとブータン
 を含める場合もあります。歴史的には「Greater India」(大インド圏)と
 も呼ばれる地域ですが、明確な地理的区分ではないので、歴史的文脈を
 無視して単に「南アジア」と訳すと誤解される恐れがあります。唐突で
 すが、シャーロック・ホームズの相棒であるワトソン医師は、インドに
 従軍しアフガン戦線から負傷帰還したことになっています。コナン・ド
 イルがホームズ・シリーズを書いたのは19世紀ですから、どんな表現を
 しているのか確かめることにしました。シリーズ第1作の長編「緋色の
 研究」(A study in scarlet:1887)の冒頭にワトソンが自分の略歴を書
 いており、Bombay や Peshawar などのインドの地名が出てくるのですが
 「South Asia」は見当たりません。探偵小説に使うには抽象的で硬すぎ
 る表現だったのかもしれません。

 ●「中南米」を同時に襲うハリケーン?

  この地震と前後してカリブ海ではハリケーンの被害もありました。
 CATV ニュース局の一つ「朝日ニュースター」で「中南米でハリケーンの
 大被害」と言うのを聞いて、またビックリです。南米でも最北部のベネ
 ズエラやコロンビアなどはハリケーン被害にあう可能性はありますが、
 今回そんな情報は聞いていなかったからです。調べてみると、台風レベ
 ルの熱帯性暴風(tropical storm)「Stan」による洪水と土砂崩れでグア
 テマラやエル・サルバドルなど中央アメリカ(中米)6ヶ国で610人以上が
 亡くなり、多くの家屋が失われたということでした。つまり「南米」は
 関係ないのです。

  この間違いは「ラテンアメリカ」のつもりで「中南米」と言ったとこ
 ろにあります。ラテンアメリカはメキシコ以南の旧スペイン領、ポルト
 ガル領諸国、およびカリブ海の島国を指す歴史的、文化的な総称です。
 一方、地理的な区分は「北アメリカ(北米)」と「南アメリカ(南米)」で、
 その境界はパナマ地峡(Isthmus of Panama)です。「中米」とは北米のラ
 テンアメリカ諸国を指す便宜的な呼称です。このニュースでは「中米」
 を使うべきでした。ラテンアメリカ諸国がどこにあるのか定かでない人
 は珍しくありません。おそらく日本では、植民地時代の知識が乏しいま
 まに「ラテンアメリカ音楽」というジャンル(私も大好きですが)を通じ
 て知っているだけの人が多いのではないでしょうか。例えば、「ベリー
 ズ」という国がどこにあるか知っている人は少数でしょう。2005年10月
 21日は「トラファルガー海戦」200周年ですが、この戦いもカリブ海の制
 海権と無縁ではありません。

 ●地理的感覚を養うには?

  私たち翻訳に関わる者は、平面の世界地図ではなく、地球儀が頭に入
 っていると便利です。とは言うものの、地理の苦手な人もいるので、
 一つヒントを差し上げます。赤道と北緯40度線がどこを通っているか覚
 えておくことです。
  試しに北緯40度線を日本から西回りにたどってみましょう。今は干拓
 地になってしまった秋田県の「八郎潟」が出発点。ここは北緯40度、
 東経140度という覚えやすい場所です。日本海から朝鮮半島北端のハム
 フンに上陸、北朝鮮と中国の国境を流れる鴨緑江(ヤールー川)の河口を
 かすめ、北京から「万里の長城」と黄河の大湾曲部を越えて内モンゴル
 の広大な砂漠を抜け、シルクロードのカシュガルへ。中央アジアのキル
 ギスに入り、ウズベキスタンのサマルカンドを通り、油田のあるバクー
 の南でカスピ海を横断し、イラン西北端のアルメニア国境をかすめ、ト
 ルコを東端のアララト山(ノアの方舟伝説の山、5165m)からアンカラ経由
 で西岸のトロイ遺跡まで横断。エーゲ海からギリシャ北部に上陸し、マ
 ケドニア地方とアルバニアの国境をかすめ、アドリア海を飛び越えてイ
 タリアの「ブーツのかかと」を横切り、西岸のナポリの南を通過し地中
 海のサルデーニャ島を横断。マジョルカ島の北をかすめてイベリア半島
 の真ん中、スペイン東岸のカステリョデラプラナ(ここは経度0度)に上陸。
 マドリードの南、トレド、ポルトガルの古都コインブラを通り、アゾレ
 ス諸島をかすめながら大西洋を渡って北米へ。東海岸のニューヨークと
 ワシントンの中間にあるフィラデルフィアを通過。そこからコロンバス、
 インディアナポリス、デンバー、リノと米国本土のほぼ中央を4000kmほ
 ど横断し、カリフォルニア州北部の森林地帯「Redwood National Park」
 の南で太平洋に出ます。そこから日本まではひたすら海の上です。お疲
 れさまでした。

●参考
・World Disaster Report 2005 (IFRC)
 http://www.ifrc.org/publicat/wdr2005/index.asp
・Hurricane FAQ (Atlantic Oceanographic and Meteorological Laboratory)
 http://www.aoml.noaa.gov/hrd/tcfaq/tcfaqHED.html

 【著者プロフィール】
  田村 洋一(たむら・よういち)
  東京生まれ。幼稚園に入る前からFENを聴いて育った生粋のビートル
  ズ世代。SEとして日米のコンピュータ会社に勤務し業界の栄枯盛衰を
  目の当たりにしてきた。現在はフリーの翻訳者、編集者。自分の眼を
  信じる美術愛好家でもある。
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 ■ 電子辞書SHOPからのお知らせ

  ★「翻訳祭」へのご来場ありがとうございました
   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 10月18日(火)に大阪で行われたJTF「翻訳祭」、多くの方々においで
 いただき、ありがとうございました。
 当日会場でお配りした特別注文書は期限が10月末までとなっておりま
 すが、多少期限を過ぎてもお受けいたしますので、是非ご利用下さい。

  ★読書の秋に、改めて。
   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 以前日外アソシエーツから刊行した“翻訳に関する書籍”、読書の秋
 にあわせ紹介文をどう書こうか考えていました。でも、このメールマ
 ガジンのバックナンバーを読んだら、下手な前ふりはやめようという
 気になりました。既にお読みいただいた方も、昔のものは未読、とい
 う方も、是非目を通してみてください。

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  読んで得する翻訳情報マガジン No.29(2003.5.12)
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    「英和翻訳の原理・技法」レビュー
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    2005年10月刊行 定価2,500円(税込)

  1985年から2004年までのベストセラー約2000点を分野別に一覧でき
  るガイドブック。出版科学研究所等6機関の調査によるデータを使
  っています。
  付録の「各年ベストセラー・ランキング表」を見ていくと、当時の
  社会・世相がよみがえってきますが、翻訳書に注目するとまず目に
  つくのがこの本。

    「アイアコッカ―わが闘争の経営」
      リー・アイアコッカ著,徳岡孝夫訳 ダイヤモンド社

  1985年の総合ランキング上位に入っています。そういえばこの名前、
  雑誌などでもさんざん目にした記憶が‥ その後アイアコッカ氏は
  どうされているでしょう?

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 ◆ 日外アソシエーツ創業40周年特別企画講演会 ◆
   11/11(金)14:00-15:00 トーハン大阪支店
   「ユビキタスネット社会のなかの図書館」
    (昭和女子大学教授・大串 夏身 氏)

   11/16(水)13:30-14:30 博多スターレーン展示会場
   「ゆりかごから墓場まで−生涯の知的生活を
    保障する魅力ある図書館を目ざして」
    (駿河台大学教授・戸田 光昭 氏)

 入場無料です。興味のある方はぜひお申込みください。詳細はこちら
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 ■ ボビーが胴上げされて思ったこと

 千葉ロッテマリーンズが日本一となりました。
 さて、プロ野球では、優勝すると選手達がマウンド付近に集まり、監督
 の胴上げというのを行います。
 いつ、どこで、誰が始めたのか知りませんが、そういうことになってお
 ります。
 で、プレーオフ優勝時のことです。家内と二人でニュースを見ていると、
 ボビー・バレンタイン監督が気持ちよさそうに宙に舞っています。
 その時、家内が何気ない一言をもらしました。
 「アメリカでも胴上げってするの?」
 「ん?ん?んんん?」
 そういえば、外国のスポーツ中継で「胴上げ」というのは見たことがな
 いような気がします。
 「いやぁそれはないな。何しろあいつらは重いから」
 と、いつものようにその場しのぎの言い訳をかまし逃げた私ですが、
 むくむくと普段は決してめばえない探求心が湧き上がりました。

 というわけで、
 海外でも胴上げはあるのか?もしくは英語でなんというのか?
 早速、当メルマガでお馴染みの、田村洋一さん、山本ゆうじさん、
 北田敬子さんに伺いました。

 現在、三氏と侃々諤々、事態は民族学的、仏教学的方向にも流れつつ
 やりとりは続いております。

 その様子は次号でご紹介いたします。どうぞお楽しみに。

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