NEW斎藤和英大辞典を引こう!
  当コラムは、『読んで得する翻訳情報マガジン』に掲載された記事原稿に加筆補正したものです。
   
■ 鍋
 

 鍋の美味しい季節になりました。一家団欒で鍋をつつく・・・いいもんですね。というわけで、日本を代表する鍋料理「すきやき」を斎藤和英で引いてみました。

すきやき 〔透焼き、鋤焼〕 〈名〉 Slices of meat or fish eaten while cooking in an iron pan

 ん?「meat or fish」とありますね。実は、江戸時代は牛の屠殺が禁じられていたため、現在のようなすき焼きではなく、魚料理だったそうです。鋤の歯を磨いて油をぬり、熱く焼いたものの上に魚や豆腐をのせたので「すき焼き」という説もありますが、魚の薄切肉 (すきみ)を浅い鍋で焼いたものを「すきみ焼き」といい、それが後に「すき焼き」になったとも言われます。

 さて、魚が牛肉になったのは明治以降。明治2年(1869)江戸市中に牛鍋屋が相次いで開店したそうです。仮名垣魯文は『安愚楽鍋』(1871)の中で「士農工商、老若男女、賢愚、貧福おしなべて、牛鍋食わねば開化不進奴(ひらけぬやつ)」と書いています。獣肉食は、文明開化を象徴する新しい食文化だったんですね。

 参考までに研究社の新英和・和英中辞典でも「すきやき」を引いてみました。

すきやき 鋤焼 sukiyaki.
       鋤焼き鍋 a sukiyaki pan.

 1960年代アメリカで、故・坂本九さんの名曲「上を向いて歩こう」が「スキヤキ」というタイトルでリリースされ、ビルボード1位の大ヒットを記録しましたが、「スキヤキ」はもう立派な固有名詞として海外で通用するようになっていたんですね。新旧の辞書を引き比べることで時代の変遷を感じることができます。なかなか興味深いものです。

 ところで、欧米では、甘い味付けで肉を食べる習慣がないために「すきやき」よりもむしろ「しゃぶしゃぶ」の方が好まれるそうですが・・・「しゃぶしゃぶ」の話はまた今度。

 
初出 2001.11.22 (竹)
 
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