| ロンドン橋、ウェストミンスター橋、クマのプーさん橋・・・多くの小説・詩・童話・演劇・随筆などの舞台となった英国各地の橋について、関連の文学作品を取り上げながら解説した「読む事典」です。 橋の歴史的背景や建築文化、特有の語彙まで記載し、橋を通して英国の文化、風俗、慣習がみえてきます。写真・イラスト200点収録。 |
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一般に外国文学を研究したり翻訳したりする上では当然のことであるが、単に味読し鑑賞する場合ですら、その国の文化的背景に関する知識を必要とすることは論を俟たない。本事典はイギリスの文学および文化の理解に必要不可欠である広範な背景的知識の中から、「橋」を取り上げたものである。橋にはさまざまな種類があり、それがいろいろな形で文学に登場するが、英和辞典は元より英々辞典にさえ掲載されていないものが少なくないのが実情である。 |
| 例えば、'chapel bridge' がそのひとつである。あるいは 'packhorse bridge' などはイギリス人がこよなく愛着を抱いているものながら、OED (『オックスフォード英語辞典』)でも見出し語として取り扱われていない。前者は 'chapel' の「礼拝堂」から、後者は 'packhorse' つまり「荷馬」 の意味から、それぞれの橋の姿形を推量してみたところで、まさに「隔靴掻痒」の感を覚えるだけであろう。仮にそれらの語義の解釈に出会ったところで、「異文化」というものは単なることばのみの説明では、なかなか釈然としないところが残るものである。そもそも風土や習慣のちがいから我が国に存在しないものは、たとえ幾千語の文字で解説を試みたとしても、そのものの持つイメージを彷彿させ得るまでには至らない場合が少なくないからである。 |
また、そのような橋梁用語の意味の問題だけにとどまることでもない。具体的に概略すると、R.D.ブラックモアの『ローナ・ドーン』には 'crossing made by Satan for a wager'(悪魔が賭けをしてこしらえた橋)が描かれているが 、架橋と悪魔伝説との結びつきを歴史の中に理解する必要がある。C.ディッケンズの『大いなる遺産』では、主人公が旧ロンドン橋の下をボートでくぐり抜けるのに 'shoot the bridge'(橋の下を矢のように通過する)という表現が 使われているが、そういう言い回しが流行した当時の時代背景も心得なくてならない。あるいは、T.フッドの詩のタイトルに 'The Bridge of Sighs'(嘆きの橋)という決まり文句が付けられているが、それは映画『哀愁』の原題が Waterloo Bridgeであることとも関連して、「橋」と「死」とのつながりも知るべきことになる。 |
| そこで、古代から現代までのイギリスの橋について、建築土木学的意義に触れつつその文化史を詳説し、それに数多くの写真やイラストを添えた上で、詩・童謡・童話・小説・戯曲・エッセイ・紀行文など実際の文学作品からの引用を示した事典を執筆した。取り上げた橋の種類は約40種、固有名詞としてのそれは約100基。掲載写真とイラストは計200点。引用した著者は48人、作品数は延べ85編。 |
| 著 者 |
| Copyright Yasuyuki Mitani | |
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![]() chapel bridge(礼拝堂橋) ケンブリッジシャー州のセント・アイヴィズ |
![]() packhorse bridge(荷馬橋) サマーセット州のアラフォード村 |
![]() 荷馬橋、湖水地方のウォスドル・ヘッド村 |
![]() Tarr Steps(タール・ステップス) 悪魔が架けた橋といわれる。 サマーセット州のエクスムーア |
| * ここに掲載した写真は、本文使用のものと若干異なるものがあります。 | |
| 【著者略歴】 三谷康之(みたに・やすゆき) 東洋学園大学・現代経営学部教授 1941年生まれ。埼玉大学教養学部イギリス文化課程卒業。成城学園高等学校教諭、東洋女子短期大学教授を経て、現職。1975〜76年まで〈英文学の背景〉の研究調査のため英国にてフィールド・ワーク。 1994〜95年までケンブリッジ大学客員研究員。 |